|
人前に出にくい悩み 胸部交感神経を切除 |
|
「多汗症」といって、したたり落ちるような汗を手のひらにかく人がいる。「人前に出にくい」といった意識を生み出す面もあり、悩んでいる人は、手を使う職業の人だけでなく、結構多いようだ。最近は内視鏡を使って胸部交感神経を切除する手術が効果を上げている。脇の下に小さな穴をあけるだけで手術も短時間で済む。 ▽精神的発汗 ![]() ドキドキするような体験をするときに「手に汗を握る」と言うように、手のひらなどの無毛部の汗は、自律神経が関係する精神的な発汗だ。 「多汗症も程度がさまざまだが、そういう人も交感神経が休んでいる睡眠中は、暑さによる発汗はあるが、手のひらなどに汗をかくことはない」と塩谷ペインクリニック(東京・目黒)の塩谷正弘院長(前NTT東日本関東病院ペインクリニック科部長)。 これまでに多汗症の患者約3000例に交感神経を遮断・切除する手術を行ってきた。内視鏡の利用は約10年前からという。 多汗症は、手のひらにできた汗の水滴が落ちるほどの人(グレード3)。汗の水滴が見える人(グレード2)。手が少し湿っている人(グレード1)-の3段階に分けられるという。 「グレード3と2が手術適応とされ、400人に1人ぐらいいる。結構多い。グレード1を含めると100人に1人ぐらいになる。ひどい人は、手を洗った後、ふかないような手をしている。いつも手がふやけてしまって大変」(同院長) ▽切開は4ミリ 25年ほど前から交感神経ブロックによる治療が行われるようになった。脊椎(せきつい)の左右にある胸部交感神経の途中を高周波で熱凝固させるなどの方法で、神経を遮断する方法だ。 「よい方法で効果はあるが、新たな神経が伸びてくることがあり、再発しやすかった。しかし、内視鏡の進歩により、胸の奥で遠かった手術が、手に取るように大変うまくできるようになった」と塩谷院長 。 最初は出血が大変だったが、今はほぼ出血なしでできる。内視鏡を入れる穴も4ミリの切開でよく、脇の下のしわに沿って切るので、傷跡も分からないほど。 穴は片側1つずつ。内視鏡の先から電気メスや超音波メスを出して、内視鏡を見ながら交感神経を切断する。手術は全身麻酔だが、左右合わせて1時間で終わるという。 ▽生活の質を向上 ![]() 胸部交感神経は、上から下に1-4番の神経節があり、そこから出ている神経が手の方に行っている。現在は3番の切断だけで手の汗が止まることが分かってきた。 手の汗を確実に止めようとすると、ほかの場所で代償性の発汗が多くなることも分かってきたという。 「患者さんは、1つは手を使う職業の人。音楽家や医師、理容師、ケーキ屋さんもいた。握手する機会が多い外国への留学や仕事で行くからという人も。もう1つは、汗が理由でなかなか仕事に就けないという人。人前で手を出せないことから、精神的なハンディキャップを持ってしまった人たち」(同院長) タクシー運転手で「多汗症なので運転手しかできなかった。もっと前にこの手術を知っていたら、人生が変わっていたのに」という人もいたという。 |