可能性広がるサウナ療法
心不全では多施設研究
血管障害でも効果確認

  鹿児島大病院が症例を重ねている心不全患者へのサウナを使った温熱療法。その効果を確認するため、他の大学病院も参加した共同研究が始まった。さらに別の疾患への有効性も明らかになるなど、科学的な〝湯治〟ともいえる新療法は広がりをみせている
 ▽小型サウナ
 同病院は現在、一日30人を治療しており、近く倍増する計画。治療に当たる第一内科の鄭忠和(てい・ちゅうわ)教授は「今では温熱療法の有効性は循環器専門医に認知された」と話す。
 温熱療法には風呂とサウナがあるが、風呂の水圧は心臓に負担をかけるため、心疾患では遠赤外線乾式サウナを使う。患者は、体に優しい60度で15分間過ごし、入浴後は毛布で保温しながら30分間横になってリラックス。最後に発汗で失った水分を補給する。
 これを1日1回、症状に合わせて繰り返す。対象は拡張型心筋症や虚血性心筋症など。全身の血管が拡張して血管抵抗は下がる一方、心臓からの拍出量は増加、心機能が改善する。重症例ほど効果は大きいという。
 サウナ室を設けることが普及のネックだったが、鄭教授は3年かけて、1人用の小型サウナを開発した。温度の均一化や安全性に工夫を凝らし、移動も自由で、家庭用電源で使える。
 神奈川県相模原市の北里大病院も3月から、うつ状態や関節痛などを併発した心不全患者に使い始めた。循環器内科の和泉徹(いずみ・とおる)教授は「2週間の治療で明らかに心機能は良くなる。第一、患者の表情が一回の治療で明るくなる」と話し、この入浴法を指導すれば退院後の再発作予防にも効果があるのでは、と指摘する。
 山口大や大阪市大、東京女子医大も治療を開始。鄭教授は「最終的には十病院程度の多施設共同研究としてデータを集めたい」としている。
 ▽血管新生も
 サウナ治療の可能性は、心不全以外にも広がっている。その代表が、糖尿病などに併発し、脚の血管が詰まり、最悪の場合、切断に至る閉塞(へいそく)性動脈硬化症(ASO)。
 例えば左の大腿(だいたい)動脈が完全に詰まっていた79歳の女性は、10週間の治療で血管の新生が認められた。痛みも取れ、六分間の歩行距離も100メートルから200メートルに倍増した。
 既に片脚を切断、一方も切断を迫られていた70歳の男性も10週間で顕著な効果が表れ、切断を免れたという。
 鹿児島大病院の治療例のうち、データがまとまった12例では、痛みは平均で半減した。中には激痛が消失した人も。「効果に個人差はあるが、症状が悪化した人はいない」と鄭教授。
 ▽複合効果
 この効果で重要な役割を果たすのが、血管拡張作用がある一酸化窒素を合成する、血管内皮細胞の酵素eNOS。
 生後30週程度で心不全を発症、1年で死ぬハムスターに温熱療法を施すと、寿命が約3週間延びるが、通常、心不全の進行に伴い減少するeNOSが逆に増加した。
 マウスの後ろ脚の血管を除去し、人工的なASOにしても、温熱治療でeNOSが明らかに増え、脚の血流は改善するが、eNOSの働きを阻害する物質を加えると、この効果は薄れた。
 鄭教授は「温熱療法には血管拡張だけでなく、自律神経やホルモンのバランス回復、メンタル面のリラックス効果など、多様な効果が複合している。副作用もなく安価で、化学療法など他の治療を補完する治療法として大きな可能性を秘めている」と強調している。


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