子宮内膜症はアレルギーか
薬剤投与で効果
新たな治療法の開発へ
 下腹部のさまざまな痛みや腰痛を引き起こし、不妊とも関係するといわれる「子宮内膜症」。
 詳しく分からないこの病気の原因を、アレルギーだとする新たな研究結果が栃木臨床病理研究所や自治医大大森赤十字病院(東京都大田区)などのグループによって明らかにされ、注目を集めている。
 抗アレルギー剤を用いた試験治療でも効果が見られ、同研究所の菅又昌雄所長は「副作用の少ない予防、治療法の開発が可能で、多くの女性に朗報になりそう」と話す。
▽従来は対症療法
 子宮内膜症は、子宮の内側にあるべき膜が、腹膜や卵巣表面、腸などさまざまな場所にでき、増殖してしまう病気。
 患部で炎症反応が起きたり、周辺組織と癒着したりするのが特徴で、月経痛や性交痛のほか、患部周辺が引っ張られるため下腹部の痛みに悩まされる。
 月経の停止や妊娠で症状が改善することから、薬物療法では、これらと同じ状態をつくり出す薬剤を継続して使う。
 ただ、肝機能障害、精神的不安定、血管内で血液の塊ができる血栓、体重増加など、さまざまな副作用が少なくない。
 手術の場合は癒着を丹念にはがし、病変部を取り除く方法が一般的だ。
 先進国に患者が多く、先進国病ともいわれるが、発症原因がはっきりしておらず、これまでの治療法は対症療法にとどまっている。

▽放出抑える
 患者の病変部組織を顕微鏡で調べた菅又所長らは「マスト細胞」と呼ばれる細胞が、患者でない人よりも多かったことに着目。
 このマスト細胞は、アレルギーのもとになるいろいろな抗原の作用で細胞膜が破壊されると、多様な化学物質を放出してアレルギー反応や炎症反応を引き起こすことが知られ、花粉症や気管支ぜんそくなどにも関与する。
 病変部を詳細に調べると、化学物質の放出を起こしたマスト細胞は、普通の人よりも平均で約十倍多かった。また、子宮内膜の増殖や癒着のもとになる線維芽細胞やマスト細胞を増殖させる遺伝子が活発に働いていることも確認した。
 子宮内膜症のモデルラットを用い、一般の抗アレルギー剤を投与すると、放出現象が約5分の1に減ったほか、線維芽細胞も、アポトーシス(細胞死)という働きにより減少した。
▽痛みも軽減
 気管支ぜんそく治療のため抗アレルギー剤の一種をのんでいる子宮内膜症患者10人を調べると、手術の際、薬物療法を受けていない対象群10人より、平均して癒着部位がはがしやすかったことが判明。
 病変部ではマスト細胞の数が減少し、化学物質の放出が抑制されたほか、アポトーシスにより線維芽細胞も減った。
 「アポトーシスがなぜ生じるのかはよく分からないが、もともと生体に備わる細胞死で、ほかの細胞には影響がない。副作用の少ない薬剤開発につながる」(同所長)
 また、子宮内膜症と、同症に起因する月経困難症の患者計21人への投与では、12人で痛みが和らいだ。
 子宮内膜症の確定診断は、手術をするまで難しい場合が多い。アレルギーのもととなる抗原が見つかれば、新たな診断法が開発できるかもしれないが、「特定を進めている段階」という。
 菅又所長は「抗アレルギー剤は、子宮内膜症の治療薬としてはまだ認められていない。承認のためには、さらに有効性や安全性を検討する必要があり、対象患者数を増やして研究に取り組みたい」と話している。




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