新レーザー手術普及へ
中高年の前立腺肥大症
手術中の出血や痛みが減少

 中高年の男性に多い前立腺肥大症。生命への直接の危険はないが、夜トイレに何度も起きたり、尿の切れが悪くなったりして、生活の質(QOL)を低下させるやっかいな病気だ。重症の場合は手術が必要となるが、これまでの標準的な方法よりも出血量や手術後の痛みが少ない「ホルミウム・ヤグレーザーによる前立腺核出術」(HoLEP)が普及し始め、注目を集めている。
 
 ▽小さい患者負担
 HoLEPは、内視鏡を尿道から挿入し、高出力のレーザーで肥大した組織を切除する手術。博愛会病院(福岡市)泌尿器科の持田蔵(もちだおさむ)部長は「前立腺肥大症の内視鏡手術は、電気メスで切除する方法が30年近く標準術式だったが、HoLEPは患者の負担が小さく、あらゆる面で優れている」と強調する。
 前立腺は男性のぼうこうの下に尿道を取り巻くようにある組織で、ちょうどミカンのような構造。実に相当する「内腺」という部分が肥大して中心部の尿道を圧迫すると排尿障害が起きる。
 50歳ごろから患者が出始め、70―80代では7割以上の男性に前立腺肥大症の傾向がある。高齢化社会の進行に伴い患者数は増加しており、症状が軽い場合は薬物治療が中心だが、重くなったり薬が効かない場合に根治させるには手術が必要となる。

 ▽欧米でスタート
 現在、主流の手術方法は大きく分けて2種類ある。切除する部分が小さい場合は先端に電気メスをつけた内視鏡を尿道から挿入し、内側から前立腺を少しずつ切り取る「TURP」という術式が選ばれる。切除部分が大きい場合は開腹手術が行われることが多い。
 だが、開腹手術は患者への負担が大きく、TURPも「ミカンの果肉を切り取っていくような方法のため、出血が多くなりやすい」(持田部長)。このため手術のスピードが要求され熟練が必要とされる。
 このような中、1996年ごろから欧米を中心に始まったのがHoLEPだ。
 レーザーは波長によって性質が異なるが、HoLEPで使われるホルミウム・ヤグレーザーは水に吸収されやすく、色素には吸収されにくい。このため高出力装置の開発に伴い、組織の深部に熱の影響を与えず、表面だけを焼き切ることが可能になった。

 ▽無理せず切除可能に
 持田部長によると、ホルミウム・ヤグレーザーの最大の特徴は切るのと止血が同時にできることだ。このため、TURPでは5%ぐらいの手術で出血に伴う輸血が避けられなかったが、HoLEP導入後は輸血が必要になったケースはほとんどなくなった。大出血の危険がないのでこれまで手術できなかったり、開腹手術が必要だったケースにも適応範囲が広がったという。
 また、TURPの場合は手術後、痛みを抑えるため鎮痛剤を使うことが多いが、HoLEPの場合は「無理に切り込みを入れずに、ミカンの実と皮の境目に相当する個所を無理せずきれいに切れるので、手術後の患者の痛みが少ない」(持田部長)。このため患者の4―5割は鎮痛剤を全く使わないで済むという効果もあった。
 手術は患者の下半身に麻酔をかけた状態で行われる。午前中に手術をした場合、夕方からは水を飲んだり食事もできる。HoLEPは術後の回復も早いため、手術後、尿道にカテーテルを挿入する期間はTURPの平均5・8日に対して大幅に短い1・8日。「患者さんの負担が全然違う」(持田部長)という。


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