乳幼児らにも低侵襲手術
美容上の利点大きく
治療装置などに工夫
 内視鏡の普及などで、大人では大きな流れになっている「低侵襲手術」が、新生児や乳幼児でも始まっている。傷口が小さくて済むため美容上の利点が大きい上、術後の痛みが少なく回復も早いからだ。子供の体格に合う装置や器具は少ないが、実施施設はさまざまな工夫で従来と同様の治療成績を上げている。
▽傷が悩みに
 「子供は元気になり成長すれば、小さいころに手術を受けたことは忘れてしまう。だが目立つ傷が残れば、それが悩みとして残る人も少なくない」。
 こう話すのは、東北大小児外科の仁尾正記・助教授だ。
 同外科が手掛ける全身麻酔手術の8割ほどは6歳未満の新生児や乳幼児が対象。かつての手術は、最初にメスで大きく切開するのが一般的だったが、約10年前から胸腔(きょうくう)鏡や腹腔(ふくくう)鏡など内視鏡を併用した手術に取り組んでいる。
 例えば、両肺の間にできる縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)などの場合、大人では左右の肺に別々に空気を送り込む気管チューブで麻酔をしながら腫瘍を切除する。だが、この方法は通常、6歳以上にしかできない。
 そこで仁尾助教授らは麻酔科医と協力しながら、六歳未満でも使用可能なように特別に工夫したチューブを使ったり、傷が目立ちにくい脇の下から挿入する器具で肺の換気を止めたりして、胸腔鏡で腫瘍を切除する手術を考案。これまで13人に実施した。
 術後の回復も早い。「通常の開胸手術では術後、1、2日は集中治療室に入るが、この方式ではほとんど利用していない。合併症や症状再発もこれまでのところない」と仁尾助教授。

▽利点ある場合のみ
 腹部では、胃食道逆流症や、卵巣などによく見られる袋状の嚢胞(のうほう)の治療、脾臓(ひぞう)や胆のうの摘出などで実施している。大人の場合、4―5カ所の小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術が一般的だが、小さな子供では多数の器具を挿入すると器具同士がぶつかり合い、かえって手術が難しくなることがある。
 このため穴の数をできるだけ減らし、場所も傷が目立たないおへそを利用するなどして、約25人を手術した。「1人1人に異なる工夫が必要」(同助教授)だが、病気によっては、ほとんど傷の残らない手術も可能という。
 回数を減らすことによる低侵襲手術もある。新生児の肛門(こうもん)が閉鎖状態の鎖肛(さこう)の重症例などでは、いったん人工肛門を付け、時間がたってから再手術して患者自身の肛門をつくり直すのが通常だが、同小児外科では最初の手術で患者自身の肛門をつくり、機能を高める訓練を行う。
 仁尾助教授らは、従来の方法に比べ確実に利点があると考えられる場合に限り低侵襲手術を計画。想定されるあらゆる事態に対処できる態勢を整えた上で実施している。
 それでも術中の出血を止めにくい場合や、臓器の癒着がひどく手術時間が極端に長くなりそうな場合には、安全性を最優先して途中で通常の手術に移行することもあるという。
 仁尾助教授は「技術的熟練を要するが、子供の手術は救命中心から、安全性を確保しつつ、生活の質を高める努力をする時代になった」と話している。



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