ハーセプチン術前で効果
乳がん治療、米学会で注目

 6月初めに米ニューオーリンズで開催された米国臨床腫瘍(しゅよう)学会。頭文字からASCO(アスコ)と呼ばれ、抗がん剤などに関する最先端の成果が報告される学会として、世界各国の専門医の出席も多い。
 「今回は日本でも使われている乳がんの治療薬が、使い方によって劇的に効果がアップするという、びっくりする話題があった。現在の標準的治療法を変えていかなくてはならないだろう」と渡辺亨(わたなべとおる)・国際医療福祉大臨床医学研究センター教授(山王メディカルプラザ・オンコロジーセンター長)と話す。
 1つは乳がんの分子標的治療薬ハーセプチン(一般名、トラスツズマブ)の話題だ。

▽67%で完全消失
 この薬はがん細胞が持つ「Her2」という受容体を狙って攻撃する働きがあるが、乳がん治療によく使われるアンソラサイクリン系の抗がん剤と併用すると、心不全を起こす副作用が現れるとされ、同時投与が禁止されている。
 「ところが、ASCOで発表された米テキサス大MDアンダーソンがんセンターからの報告では、乳がんの手術前に、Her2陽性の患者34人を2群に分け、一方にはパクリタキセルという抗がん剤とアンソラサイクリン系の抗がん剤を連続して投与し、他方は同じ抗がん剤にハーセプチンを併用投与。その結果、併用群で患者の約67%で乳がんが完全消失するという劇的な効果があった」と同教授。
 ハーセプチンを使わなかった場合の完全消失率は約25%だったので、42ポイントものアップ。
 「サンプル数は少ないが、明らかな併用効果が認められたため、比較試験を監視していた委員会が、試験の継続を止めたほどだった」という。  しかも心臓の障害は1例も見られなかった。
 
▽早く標準治療に
 だが現在、日本でハーセプチンの使用が認められているのは転移性乳がんだけ。このため、術前化学療法としては日本では使えない。
 「3分の2の患者でがんが完全消失したことは、今後、今の標準治療が激変する可能性がある」と渡辺教授。
 また、転移性乳がんに対して、パクリタキセルを3週間間隔で投与する日本の標準治療に対し、量を減らして1週間間隔で投与する方が奏功率(がんが半分以下に縮小し、1カ月以上継続)が倍近くアップすることも、ASCOで報告された。
 渡辺教授は「日本では1週間間隔で投与する治験がやっと終わったところ、まだ実施できない状況にある。日本でも早く標準治療に取り入れたい」と話している。

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