微小重力環境で軟骨作り
 幹細胞用いた再生技術
  骨髄の中に含まれる「間葉系幹細胞」を微小な重力しかかかっていないのと同じような環境で分化させ、大きな軟骨を作る技術を、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が開発した。
 関節リウマチや変形性関節症で、ひざの軟骨を広い範囲で損傷した患者に移植する臨床応用に向け、研究を進めている。
 間葉系幹細胞は、軟骨、骨、靱帯(じんたい)など、さまざまな組織へ分化する能力を持つとされ、骨髄から採取し増殖させた後、分化を促す物質を加えて組織の再生につなげる。
 しかし、培養の際に重力の影響を受けるため、細胞がシャーレの底に沈んでシート状になってしまう問題がある。かきまぜながら培養しても、細胞が高密度に固まって栄養が行き渡りにくくなるほか、まぜたときに細胞膜が壊れて細胞が死んだり、うまく軟骨組織にならなかったりするという。
 同研究所ナノテクノロジー研究部門研究グループ長の植村寿公博士(再生医工学)らは、米航空宇宙局(NASA)が1990年代に開発、微小重力環境と同様の状態で組織を立体的に培養できる装置を利用することにした。
 装置には直径5―10センチの円盤状の容器が縦向きについており、容器の中に培養液と間葉系幹細胞を入れてモーターで回す。「間葉系幹細胞や、できてきた軟骨が沈まず一定の場所でふわふわ浮くように、回転数を調節します」と植村博士は解説する。
 ひざ軟骨の損傷では、治療のために直径約1.5―2センチの大きな軟骨が必要になる患者が多い。
 同研究所は、ウサギの間葉系幹細胞を使い、1分間に12―20回転させる設定で4週間培養し、直径約1.5センチ、厚さ約8ミリの大型の軟骨を作った。強度も問題なく、軟骨をなくしたウサギのひざに移植すると、4週間で周りの組織と結合し修復されたという。
 筑波大などと共同で、患者の間葉系幹細胞を用い、同じ方法で軟骨を作ることにも成功した。
 植村博士は「自分の軟骨から採取した軟骨細胞を培養し、移植する方法もあるが、採取できる細胞数に限りがあるうえ、健全な軟骨を傷つけることになる。間葉系幹細胞を使った手法は、大きな軟骨を多く得られる」と話す。 (2007/12/18)

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