治りにくくなった中耳炎
耐性菌増加が原因
ペニシリンで効果的治療
  耳が痛くなって発熱、聞こえにくくなるなどする子どもの急性中耳炎は、以前に比べて治りにくくなった。治療薬が効きにくい耐性菌が増えたのが原因だ。それでも「ペニシリンを有効に使えば、耐性菌を増やさずに治療できる」と専門医は指摘する。
 
▽2種類の菌
 「急性中耳炎は、肺炎球菌が原因だと23.0%、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別の細菌)だと14.7%が再発する」。和歌山県立医大の山中昇教授(耳鼻咽喉科)は、この2種類の病原菌対策が重要だと話す。
 2つの菌は、1歳までに5―3割の子どもで鼻に常在するようになる。肺炎球菌は肺炎や髄膜炎の原因にもなり、高齢者も注意が必要だ。子どもでは、鼻と耳をつなぐ耳管を通って中耳に感染すると中耳炎を発症する。
 治療にはぺニシリンやセフェム系の抗生物質を使うが、山中教授によると、中耳炎の子どもから分離した肺炎球菌の8割、インフルエンザ菌の6割は、耐性菌になっている。
 
▽鼓膜にチューブ
 保育園に通う7カ月の女児が発熱、抗生物質と解熱剤を処方され、熱はいったん下がった。だが1週間後に再び高熱が出て、耳の後ろが大きく腫れた。重症の急性中耳炎だ。そこで山中教授らは、鼓膜を切開してうみを出し、ペニシリンを注射。女児は回復し、5日後に退院した。
 神奈川県の耳鼻咽喉科クリニックには、発熱、鼻水、耳が聞こえにくいといった症状の子どもを連れた親が相次いで訪れる。中耳炎も多く、医師は耳だれを検査し病原菌を特定。特に治りにくい場合は、局所麻酔をして、鼓膜内からうみを出し、中を乾かすためのごく細いチューブを入れる処置をする。
 治療の際に子どもが泣くとかわいそうだが、この医師は「小学校高学年まで再発を繰り返す子どもが多くなっており、こうした方法を使わざるを得ない」と話す。
 山中教授によると、急性中耳炎の3分の1は1カ月たっても治らない。「うみを出し、薬で十分たたく。そうすれば耐性菌も増えない」。切開した鼓膜は、間もなくふさがるので心配ない。
 1日3回の薬を2回しか飲まないのは駄目。薬は必要な回数を守らないと効果がない。耐性菌は抗生物質を多用するほど増える傾向があり、欧米に比べセフェム系の使用量が多い日本では、ペニシリンの耐性はセフェム系より少ない。耐性菌に対しても十分な濃度のペニシリンは効くという。
 
▽鼻をきれいに
 日本耳科学会などは2006年、鼓膜の状態から重症度を分類、軽症の場合は3日間抗生物質は投与せずに経過をみて、中等症以上ではペニシリンなどを使うなどとする小児の急性中耳炎診療ガイドラインを定めた。
 山中教授らはガイドラインに先立ち、2000年から切開とペニシリン投与を基本とする治療を開始。効果があると確かめていたが、この方法は耐性菌も増えにくい。
 耐性につながる肺炎球菌の遺伝子変異を調べると、この方法の導入後の4年間で、全国平均では遺伝子変異がないのは7%だが、和歌山県では21%だった。ただ下痢が起きやすくなり、途中で服用をやめると耐性菌を増やす結果になる。
 子どもが鼻に入れた指を介して菌は周囲に広まることが多く、山中教授は予防には手洗いが重要と強調する。また中耳炎を起こしやすくする鼻詰まり対策として、鼻水を吸い取る器具などを使い「親は子どもの鼻をきれいに保つようにしてあげてほしい」と話している。(共同通信 美浦敬)(2007/12/04)

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