検査翌日から抗がん剤
無治療期間を短縮
  口腔(こうくう)がんの疑いで組織の一部を採取する「生検」という検査を受けた患者に、翌日には結果を知らせて、がんであれば抗がん剤治療を始める試みを、昭和大歯学部の新谷悟教授らが進めている。手術まで治療を受けずにいる「無治療期間」を短縮し、病気の進行を抑えようという狙いだ。
 舌や歯ぐきなどにできる口腔がんの治療は、一般に①生検②摘出した組織を顕微鏡で見る病理診断でがんかどうか判定③画像診断で部位や転移の有無を検索④抗がん剤や放射線による治療で病巣を小さくして手術―の順に進む。
 生検から病理診断までまで数日から1週間、その後も「画像診断装置や手術室の確保の都合があり、手術までに数週間かかる」(新谷教授)。
 口腔がんは首のリンパ節に転移しやすく、新谷教授は無治療期間を短くする方法として、迅速病理診断と早期抗がん剤治療の導入を決めた。
 通常の病理診断では、採取した組織をホルマリンに浸しパラフィンで固めて切片を作る。一方、迅速診断では液体窒素で瞬時に凍結させるため、すぐに切片ができ結果が分かる。手術中に、がん細胞の取り残しがないかなどを調べるのに使われており、新谷教授は「信頼性は高い」という。
 患者が希望すれば、生検の翌日に結果を教え、がんなら直ちに飲み薬の抗がん剤治療(2週間服薬し1週間休薬)を開始。がんがある程度進行していれば、放射線療法を併用するなど、治療を行いながら手術の準備を進める。
 この方法を昨年7月以降、19人に実施し、手術までの期間は20日程度で済んだ。
 見ただけでがんと分かる症例には、病理診断の結果を待たずに抗がん剤投与を始めてはどうかという意見もあるが、新谷教授は「抗がん剤は副作用も起き得るので、病理は欠かせない」と言う。
 こうした方法を患者側が望んでいるのか確かめようと、新谷教授は調査会社に依頼しインターネットで全国の一般の人約1300人にアンケート。生検から2、3日以内に結果を知りたい人は73%、結果判明から1週間以内に治療を始めてほしい人は85%と、迅速な対応を望む意見が多かった。
 迅速病理診断は、がんの手術を毎日行っている診療連携拠点病院のような医療機関なら可能で、新谷教授は「飲み薬の抗がん剤を使う胃がんや食道がんなどの治療にも応用できるのではないか」と期待している。 (2007/12/04)

トップページへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2007 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved