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「母さんといたい」 痛みの緩和で穏やかな最期 |
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神経の難病で床に就くことが多くなっていた夫(77)が今年3月、「首が回らない」と訴えた。妻の田中今日子さん(72)=仮名、神奈川県在住=があごの下を触ってみると、大きなしこりがある。すぐにがんの専門病院で検査したら、既に食道や肺など6カ所に転移してた。 「母さんといたい」。担当医が「治療しても延命は…」と告げると、夫はそう望んだ。だが、子どもは独立して2人暮らし。今日子さんは「1人でみていけるんだろうか」と不安が先にたったという。 その不安をぬぐってくれたのは、担当医から紹介された近くのめぐみ在宅クリニック(横浜市瀬谷区)の小沢竹俊院長(44)だった。「奥さん、ここで見送りましょう。僕が診ますから」 がんの療養では、モルヒネなどの医療用麻薬で痛みをとることが欠かせない。液体状の経口薬から座薬、痛みがひどくなると張り薬を併用するなど症状にあわせて処方した。 小沢院長は「今は痛みをコントロールするのは格段に容易になっている」と話す。ただ、「身体的な痛みより、精神的な痛みを取り除くことのほうがもっと重要」と強調した。 痛みを感じるのは精神的な要素も大きいからだ。小沢院長は医療の枠を超えて、夫の話や家族の悩みにもじっくりと耳を傾けた。今日子さんは「夫は先生がくるのを楽しみにしていたほど。おかげで強く痛みを訴えることはなかった」と振り返る。 通りに面した部屋のベッドで、家の周りに咲く花を窓越しに眺め、聞こえてくる近所の立ち話を楽しんだ。週末に孫たちが遊びにきて騒いでも「にぎやかなのは生きている証拠」といたずらっぽい表情で話していた。 それから3カ月後にやってきた最期の日。「分かりますか、お母さんですよ」との呼び掛けに「分かってるよ」と穏やかな表情で応え、娘夫婦や孫たちも見守る中で息を引き取った。 最期の日が近づくにつれて頻繁に訪問し、大切な家族を失う今日子さんたちに心の準備も促した小沢院長。連絡を受けて駆けつけ、「いいお顔している。よかったですね」と静かに話した。(完) (2007/11/20) +font> |