新型の脅威、小説で警告
国立感染研の岡田研究員
 東南アジアの島国で新型インフルエンザが発生。ウイルスは現地に滞在していた自営業者やビジネスマンによって日本にもたらされ、強い感染力と毒性により、日本だけで2カ月間に120万人もの死者が出る―。
 新型インフルエンザの脅威を小説風に描いた「H5N1」(ダイヤモンド社、1680円)が9月に出版された。著者は国立感染症研究所ウイルス第3部の岡田晴恵研究員。専門知識を基に、被害を具体的に想定、国への苦言や提言も盛り込み、医療、行政関係者の関心を集めている。
 新型インフルエンザは、アジアを中心に広がりつつあるH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが変異して出現すると考えられている。通常のインフルエンザと違い、だれも免疫を持っていないので、世界的大流行になると考えられ、各国が対策を急いでいる。
 岡田研究員によると、現実的な対策は、H5N1型ウイルスを基に国民全員分を作っておいたワクチンで基礎的な免疫をつけ、備蓄したタミフルで早期に治療、重症化を防ぐこと。
 日本では、タミフル備蓄は進みつつあるが、ワクチンは近く製造承認という段階。何より問題なのは、「国の行動計画が、新型ウイルスの毒性を弱毒としていること」と岡田研究員は指摘する。
 行動計画は、国内の死者を約64万―17万人と想定している。致死率を、スペインインフルエンザ(スペイン風邪、2%)やアジアインフルエンザ(アジア風邪、0.53%)並みとした結果だ。
 しかし、世界保健機関(WHO)のまとめでは10月31日現在、H5N1型には世界で333人が感染し、61%に当たる204人が死亡している。「H5N1型は強毒なのに、行動計画は被害を過小評価している。海外のシンクタンクは、日本の死者を210万人と試算している」(岡田研究員)。
 また、実際の対策に当たる地方自治体についても、鳥インフルエンザが発生した大分、宮崎両県や、2度の大地震に襲われた新潟県、東京都の一部の区など、危機管理意識の強い自治体を除き準備は不十分とみる。
 本では、新型発生は今年10月という設定。岡田研究員は「出現は10年、20年先の話ではない。この2、3年と考えています」と語った。(2007/11/13)

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