画像見て会話し認知症予防
「ふれあい共想法」
脳に刺激、東京大が開発
 スクリーンに映した趣味などに関する画像を題材に、グループで語り合って認知症の予防につなげようという「ふれあい共想法」を、東京大の人工物工学研究センター(千葉県柏市) のグループが開発した。活発な会話により脳に刺激を与える手法で、地域での実践研究も始まった。

▽祖母がヒント
 ふれあい共想法は、大武美保子准教授(サービス工学)が、認知症の祖母との触れ合いをヒントに昨年秋に考案した。
 「話していると、祖母がいろいろなことを思い出すのに気付いた。脳が働きだすからで、会話のきっかけをうまくつくれば、認知症の予防や改善に生かせると思った」
 会話の足掛かりとして、目で見て、考えや体験を共有しやすいパソコンの画像を用いることにした。表示や編集も簡単だからだ。
 参加者は一グループ6人程度で「好きな物事」「思い出の場所」「健康」などのテーマに合う物や写真を持ち寄り、1人当たり数枚の画像にしてパソコンに取り込む。
 そして、画像を投影したスクリーンの前に「コ」の字形に座り、自分の画像について約五分間話し、周りの人が質問。緊張感が保てるよう、1回の時間は準備も含め約1時間に設定した。

▽言葉の海から
 今年七月、柏市の介護予防センター内に誕生した実践研究の拠点「ほのぼの研究所」の開所式で、共想法が行われた。
 高齢の女性が、すし店で撮影した画像を示し「小さいときからおすしが大好き。これは孫2人を連れて行ったときの写真」と説明。男性に「行く店はいつも決まっているのですか」と尋ねられ、「ケーキも食べられるので今回はここにしました」と答えるなど、やりとりは特別なものではない。
 だが、大武准教授は「会話をするときには、どんな話をするのか、どんな反応が返ってくるのかなどを考えて、言葉の海の中から言葉を選んでいる。すごく頭を使う作業なのです」と説明する。
 研究グループは、ふれあい共想法の有用性を確かめるため、60―80代の男女6人で、共想法を実施した場合と、画像を提示せずにテーマに沿って話すときとで、30分間に話した回数を比較。6人とも共想法のときの方が1・6―4・3倍多く、活発なコミュニケーションができていたという。

▽強い記憶
 また、共想法を1週間おきに4回行った後、5週目に、それまで使った86枚の画像に関し「誰が持ってきたか」「どのテーマで示されたか」をテストした。
 6人の正解率は「誰か」で80―98%、「どのテーマか」では51―60%で、研究グループは「一度見ただけなのに、多くの画像が強い記憶として残っており、共想法により脳の記憶機能が活性化されたと言える」と分析している。
 実用化には現場での研究が欠かせないため、今年4月から柏市との連携を本格化。
 ほのぼの研究所 を拠点に、市内の高齢者に参加してもらい、認知症の予防に重点を置いて共想法を検証する計画だ。血流を計測して脳活動を見たり、どのようなグループ分けが良いのかを試したりする。軽度の認知症患者で有効かも調べたいという。
 大武准教授は「会話するだけなので参加しやすく、仲間づくりもできる。専門の人材も養成し、高齢者施設や病院、町内会などで広く取り組まれるようにしたい」と話している。(共同通信 谷本敏之)(2007/9/04)

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