背骨にセメント、痛み緩和
針で注入し骨折部固定
 時間短縮の新手法も
 圧迫骨折した背骨の椎体(ついたい)にセメントを注入して固定する経皮的椎体形成術(骨セメント治療)。日本には10年前に導入され、現在は全国で年間約2000例実施、痛み緩和に威力を発揮している。以前より短時間でセメント注入用の針を刺せ、針の位置を確認するためのエックス線の被ばくが少なくて済む手法も開発された。

▽寝たきりにも
 椎体は臼のような形で、首から腰まで24個。骨粗しょう症やがんでもろくなると、ちょっとした弾みで押しつぶされたように骨折することがある。折れた部分が固定されないと、強い痛みを伴い、歩行困難や寝たきりの原因にもなる。
 コルセットや鎮痛剤、外科手術に代わる治療として1980年代後半にフランスで始まったのが経皮的椎体形成術だ。
 局所麻酔でうつぶせに寝た患者の椎体に、エックス線透視装置やコンピューター断層撮影装置(CT)で確認しながら針を刺し、3~4ミリリットルの医療用セメントを注入する。「セメントは約20分で固まり、数時間後には車いすや寝たきりだった人が歩けるようになる。痛みは六割の患者でゼロになり、4割で半分から3分の1に減る」と、聖マリアンナ医大病院(川崎市)放射線科の滝沢謙治准教授は説明する。

▽ピンポイント
 治療で難しいのが、神経の束である脊髄(せきずい)を避けて針を斜めに刺し「椎体の中心線上で、腹の方から3分の1の所に到達させる」(滝沢准教授)こと。直径2~3ミリの針を、幅約5ミリしかない椎弓根(ついきゅうこん)という部分に貫通させなければならない。
 熟練が必要な技術を容易にしようと滝沢准教授らが考案したのが、C形のアームの両端にエックス線の照射部と検知部を備え、画面中央に印をつけた透視装置を使うISOP(イソップ)法だ。
 画面の印に針を到達させたい部分が来るよう、患者が寝た検査台を動かす。次にアームを回転させ斜めから照射、印が椎弓根と重なるように調整すれば、針の進入ルートが決まる。あとはルートに沿うように針を刺せば、ピンポイントで目標に達する。
 多くの医療機関では、背骨の左右から針を浅めに計2本刺す。ISOP法だと「セメントを椎体内に均等に注入できる一方で難易度の高い1本刺しが、高精度で短時間にできる」と滝沢准教授。
 位置合わせから針を刺し終えるまで6分30秒、セメント注入終了まで15分と、従来の半分以下に短縮。椎体五カ所でも45分で可能になった。1本1万円の針の節減にもなる。2005年11月以降、この方法を約100人に実施した。  

▽適応外も
 経皮的椎体形成術は、椎体が小さい首や、血が止まりにくい病気や骨に感染症がある患者などは適応外。また滝沢准教授は「治療は、70歳を超えている人なら早いほどいい。50、60代だと、二週間程度安静にすれば骨折が自然に治る可能性が高いので、様子を見てから」と言う。
 治療後に発熱することがあるが「03年以降、計約200例に実施し重い副作用はない。アレルギーが原因とみられる肝機能障害が1例あったが、1週間で落ち着いた」。
 聖マリアンナ医大病院の場合、治療の際は約1週間入院。厚生労働省の先進医療に認められているため、骨セメント注入は自由診療で14万5千円、その他の検査、入院費などは保険診療となる。院内連携も特長で、本来なら適応外となる脊髄の神経を圧迫している症例も、放射線科で骨セメント治療をした後に、整形外科が圧迫している骨を取るなどしているという。(共同通信 影井広美)(2007/8/13)

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