加齢で増える鼠径ヘルニア
日帰り手術が主流に
筋膜弱り腸が飛び出す

 足の付け根にある腹壁の筋膜が加齢とともに弱くなり、腸の一部が飛び出してくる鼠径(そけい)ヘルニア。力仕事をしたときなどに起きやすいが、痛みが出て初めて受診し、手術するケースが多いようだ。
 2年前からヘルニアがあったという北海道在住の男性Aさん(70)は「この冬に雪かきをしたときに痛みが出た。2日前に植木鉢を動かしたときも痛かった」と日帰り手術を受けた動機を話す。
 
 ▽専門施設
 日本ではまだ少ないヘルニア手術の専門施設「みやざき外科・ヘルニアクリニック」(札幌市)の宮崎恭介院長は「子供の鼠径ヘルニアは先天的なものだが、成人では老化現象の一つ。60歳前後がピーク」と話す。
 「手術が必要なのは、まず痛みのある人。便秘や長時間の仕事でおなかが張る感じがする人、腸が出て戻らない人も。出たり入ったりしている人はいつでもよいが、自然には治らない」という。
 男女比では男性が3倍ぐらい多いようだ。
 「従来は、ヘルニアの出口の筋膜や筋肉を糸で縛ってふさぐ方法が行われていたが、術後の痛みが強く、約1週間の入院が必要で、再発率も10-15%あった」と同院長。
 現在は、腸や腹膜を戻した所を、ポリプロピレン製のメッシュ(編み目状)のシートでふさぐ治療法が主流となっている。シートは当てるだけで、筋膜や筋肉を縫い合わせないので痛みが少なく、早期社会復帰が可能。再発も極めて少ない。

 ▽手術時間30分
 「手術は硬膜外麻酔か局所麻酔で行い、鼠径部を約4cm切開。飛び出しているヘルニアの袋(腹膜)をおなかの中に戻して出口をシートでふさぐ。手術時間30分程度。当院では午前中に手術、午後に麻酔が覚めたら退院する日帰り手術をしている」(同院長)
 Aさんの手術は午前9時に受診・術前検査の後、9時半に手術室へ。同45分、宮崎院長の執刀で始まった。メスで右鼠径部を切開。少しずつ切り進み、飛び出た腹膜を確認して中に戻した。
 通常、腹膜を押し出して飛び出した腸は、あおむけになると、おなかに戻り、腹膜だけが袋状に外に残っている。
 Aさんの場合、心血管系の持病で複数の抗凝固剤をのんでいるため、できるだけ出血を避けた方法を取った上でシートでふさぎ、10時半に手術を終わった。

 ▽抜糸も不要
 続いて、左鼠径ヘルニアの男性(77)。10時半に受診し、術前準備をして、11時35分、鼠径部の切開が始まった。
 「ヘルニアが見えましたか」「ええ、立派なヘルニアです」。男性と宮崎院長が時々会話を交わしながら手術は順調に進行。
 飛び出していた腹膜を戻してメッシュのシートを入れ、短時間で手術は終了。実質的な手術時間は30分きっかり。
 2人とも麻酔は局所麻酔を使用。手術後、回復室で安静にしていたAさんは1時間後には歩いてトイレへ。昼食を食べ、術後3時間半後の午後2時には帰宅していった。
 続いて手術を受けた男性も、術後4時間後には同様に元気に帰宅した。
 手術後の抜糸がいらないよう、溶けて体内に吸収される糸や切開部に生体用の瞬間接着剤を使っているため、傷の消毒も不要で、手術当日からシャワーが可能という。
 「遠くの患者さんの場合、電話でよく話を聞いた上、前日に診断と術前検査を行い、1泊してもらって翌日に手術している」と宮崎院長。
 ヘルニアの日帰り手術は東京の執行(しぎょう)クリニック神楽坂D・S・マイクリニック、名古屋のいまず外科なども行っている。


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