離島診療担う医師育成
長崎大に現地実習の講座
長崎大に現地実習の講座
 離島での診療に携わる医師を育てようと、2004年に長崎大に設置された「離島・へき地医療学講座」。医学部の学生が離島で臨床実習するのが特色で、医師の不足や都市部への偏在が問題になる中、離島で働く研修医が2年連続で講座から誕生するなど、成果を挙げている。

▽50の島に15万人
 長崎空港からプロペラ機で約30分。長崎市の西約100キロに五島列島最大の島、福江島がある。面積約326平方キロメートル、人口約4万人。
 島東部の五島中央病院(304床) の1室にある、講座の現地拠点「離島医療研究所」 を訪れた。常駐する前田隆浩教授(所長)は「長崎県には50を超える有人島があり15万人が暮らしているが、医師数は全国平均よりはるかに少ない。離島の医療を支えるため、医師を定着させたいのです」と話す。
 講座は04年5月に設けられ、長崎県と同県五島市が5年間で約2億円を寄付。長崎大医学部の5、6年次の臨床実習に、五島列島での実習を組み込んだ。
 5年次(約100人)は必修で、地域の中核病院を拠点に1週間滞在。小さな離島やへき地にある出張診療所、老人ホーム、高齢者の自宅などへ、現地の医師と同行し地域の実情を学ぶ。6年次は選択制で、例年10人以上が5週間滞在し、住民の診療に当たる。

▽家族のようにく
    学生は、脳出血などのデジタル画像を長崎大病院に送り専門医と治療方針を決める遠隔システムや、心疾患、未熟児出産など本土で緊急手術がいる場合のヘリコプター搬送など、離島ならではの体験もしている。
 実習は今夏から対馬でも始める予定。  中里未央助教らは04年以降、200人以上の5年次生に実習の前後にアンケートした。
 実習後は、育児や子供の教育など生活の不安が強まる一方で、本土との医療レベルの違いや離島勤務で医師としての能力が遅れるといった不安は減少。「離島に定着して働きたい」「離島医療に興味がある」と答えた学生が増え、中里助教は「将来の選択肢の一つに離島、地域医療が入るようになった」と言う。
 学生のリポートには、こんな感想もあった。「家族のように接し雑談をするだけなど、大学病院ではあり得ない診療がなされており、離島医療に触れた気がした」「がんやアルツハイマー病、かぜなどいろんな患者が来た。必要なのは幅広い知識とプライマリーケア(初期診療)だ」

  ▽奇跡的
   受講生の中からは、医学部卒業後の臨床研修先に五島中央病院を選んだ研修医が昨年と今年、計3人生まれた。「都会へ出る研修医が多く、地方の医師はどんどん減っている。離島の病院で研修医が純増しているのは奇跡的」と前田教授。
   講座1期生で研修医2年目の坂上祐樹さん(25)=長崎県島原市出身=は「実習で医療の原点みたいなものを感じた。都会の有名病院では経験できないような多くの患者、さまざまな病気を診療でき、充実している」。
   同病院は、3人が来て法律上の医師の定員数を満たせるようになったが「研修医を受け入れ教育をした経験がなく、戸惑いもあった」(神田哲郎院長)という。
   他大学からも受講希望があり、これまでに約20人が参加した。前田教授は「私たちの取り組みは、ほかの地域のへき地医療にも役立つはず。長崎を地域医療に携わる医師や家庭医を育成する発信地にしたい」と意気込む。(共同通信 谷本敏之)(2007/6/19)

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