縫合せずに半月板治療
ひざ固定し自然修復
負担少なく成績良好
 ひざの関節でクッションの役割をしている半月板は、スポーツなどで割れることがある。通常は断裂部を縫い合わせるが、大阪中央病院(大阪市北区)では、縫わずにひざを固定し修復につなげる治療を行っている。自然治癒力を利用した手法で、体への負担が少ないという。

▽切除避け温存
 半月板は、ひざ関節の左右にあり、大腿(だいたい)骨と、すねの脛骨(けいこつ)の間で、ひざに掛かる体重や衝撃を分散し、和らげる。上から見ると三日月形をしており、幅約1.5センチ。軟骨に似た組織で弾力性があるが、スポーツで着地やひざをひねった際に断裂することがある。
 症状は、痛み、関節が動かない、歩けないなど。以前は、一度割れた半月板は治らないとされ、放置すると割れた部分が邪魔になって痛みや腫れがひどくなるため、切除するのが一般的だった。
 ただ、半月板がなくなると、大腿骨と脛骨の表面にある軟骨が直接当たってすり減り、再び痛みが起きやすく「切除を避け、温存した方がいいとの流れが出てきました」と、大阪中央病院の井上雅裕整形外科部長は解説する。
 980年代には、米国の研究者が半月板にも血行があると報告。血流があれば、割れてもくっつく可能性があるとして、損傷部を縫い合わせる治療法が広まり、現在も主流となっている。

▽やすりがけく
    同病院でも縫合手術をしていたが、15年ほど前に、バレーボールで着地時に半月板を損傷した女子高校生が来院。
 半月板は大きく割れ、片方の組織が関節の中心部に移動していたため、井上部長らはまず、手術でこの組織を元の位置に戻した。約3カ月後、縫合しようと内視鏡で観察したところ、割れたところが自然にくっついていた。
 これを機に「環境さえ整えれば、症例によっては縫わなくても自然に治る」と考え、縫合法と並行して90年代前半から、縫合しない治療を始めた。
 この治療では、ひざに約5ミリの穴を2つ開けて内視鏡や器具を入れ、ずれた半月板を元の位置に押し戻す。修復力を高めるため、金属製のやすりで断裂部をこすって出血させ、手術は終了。ひざを伸ばした状態で約3週間固定する。
 縫合法のような数センチの皮膚切開は必要なく、手術翌日には松葉づえを使わずに歩くリハビリを開始。ひざに体重をかけることで患部の接着力が増すという。

  ▽同等の癒合率
  初期に実施した58人で、手術から約3カ月後の状態を評価。すると、半月板の外側から5ミリ以内の、血行が豊富な部位を損傷した51人では、うまくくっついた率(癒合率)は94%。一方、5ミリを超え血行が乏しいところを損傷した7人では29%に低下した。
 癒合した中で追跡調査できた48人中、3年半の間に再断裂したのは5人だった。
 井上部長は「5ミリ以内の症例では癒合率、再断裂とも、縫合した場合と同じか、それ以上の成績だと分かったので、5ミリ以内を適応の目安に200人以上にこの治療をしてきました」と話す。
 治癒には、血液に含まれる白血球など組織の修復を促進する物質が働いていると考えられ、皮膚の小さな傷が自然に治るのと同じ仕組み。  老化に伴う損傷には縫わない治療は行っておらず、血行がない部位の損傷やばらばらに割れたケースでは切除が必要になる。(共同通信 谷本敏之)(2007/6/5)

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