大腸がんにアバスチン承認
病院、医師に条件付け
   進行・再発し手術が不可能な大腸がんの治療薬として、世界的に使われているアバスチン(一般名ベバシズマブ)が日本でも承認され、6月半ばに発売の見通しになった。単独では効果がなく他の抗がん剤と併用。特定の分子に作用してがんの増殖や転移を抑制する。
 海外では延命効果が確認される一方で重い副作用も報告され、製造・販売元の中外製薬は、副作用の緊急事態に対応でき併用の化学療法が行える病院・医師に限って供給することにしている。
▽血管内皮増殖因子を阻害
 がん組織には、酸素や栄養を補給する腫瘍(しゅよう)血管が新しく作られる。その際に欠かせない血管内皮増殖因子(VEGF)に結合して働きを阻害するのがアバスチンだ。腫瘍血管を縮小させたり新生を抑制したりする兵糧攻め作用に加え、異常な腫瘍血管を正常化することで併用する抗がん剤が効率よく届くようにする作用がある。
 国内の治験(臨床試験)に当たった国立がんセンター東病院の土井俊彦医長は、アバスチンの登場で「生存期間の中間値が20―21カ月と、10年前に比べ10カ月延びた。これは大きい」と言う。米国では2004年2月、欧州では2005年1月に承認され、標準治療薬となっている。
 しかし「決して夢の薬ではない」と土井医長はくぎを刺す。VEGFは傷の治癒や骨格の成長などにもかかわっており、アバスチンは「もろ刃の剣になる恐れがある」というのだ。
 海外で報告された重篤な副作用としては、約1―2%の患者で消化管に穴があき、中等度以上の心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞(こうそく)は、抗がん剤だけの場合の2倍に当たる約2―9%でみられた。ほかに、けいれん発作、高血圧、粘膜からの出血などもある。
▽副作用の緊急対応などが条件
  さらに国内では、臨床試験と安全性確認試験を合わせても80人にしか使用していない。
 厚生労働省の承認条件もあり、中外製薬は①副作用への緊急対応と画像診断が24時間できる②併用の標準的化学療法が可能③当面は全症例の使用成績調査に協力する―などの条件を医療機関・医師に確認し、満たさない場合は薬剤納入を断るとしている。
 アバスチンも併用の化学療法も点滴。患者が、日本に多い飲む抗がん剤との併用を希望する可能性もあるが、土井医長は「欧米でのエビデンス(科学的根拠)がない実験医療」と警告。「日本がアバスチンを使いこなせるか、世界標準の医療を行えるか、が問われている」と適正な使用を求めている。(2007/5/22)

トップページへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2003 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved