『定年・退職うつ-5


 衰えを自覚
中村純産業医大教授

 
 仕事を成し遂げたという充実感や開放感、あるいは目標や生きがいを失ったような寂しさ、むなしさ―。人によってさまざまに感じる定年や退職をきっかけに、うつ病になる人が増えているという。産業医大(北九州市)の中村純教授(精神医学)に聞いた。

 ―定年・退職後にうつにならない方法はありますか。

 「自分がストレスにどのくらい耐えられるのかを知り、リラックスする方法を習得しておくことです。定年が近い世代は、社会経験を積み精神的に安定しているように見えますが、体力、気力は若いときほどではなく、車の運転にしても視力は下がり判断力は鈍っている。睡眠も深い眠りが減る。この年代は生理的にうつを起こしやすい要件がそろってくるので、まず、それを自覚すべきです」
   
 ―趣味があるといいですね。

 「退職して明日から生活が変わることは、なかなか想像できないものです。毎日が日曜日ということにならないよう、定年・退職後のプランを2、3年前からでなく、もっと早くから立てたほうがいい。打ち込める趣味や生きがいは、急には見つけにくいものです」

  ―会社がすべきことはありますか。

 「企業では、アルバイトやパート、派遣社員が増えて正社員が減る傾向にあり、その分、正社員の責任と負担が大きくなっています。日本経団連や企業は、働く人や退職した人の精神疾患や自殺についてもっと考え、対策を提案し実行してほしいですね」

 ―産業医大の取り組みは。

 「精神疾患と、それに伴う自殺をいかに減らすか。その取り組みの一つとして、わたしたちは昨年、福岡県中間市と共同で『こころの健康づくり事業計画策定協議会』を発足させました。中小企業を対象に、勤務実態やストレス、症状などに関する調査を行い、パンフレットを全世帯に配布するなどの啓発活動を計画しています。関係機関のネットワークを作り、自殺者を2割減らすのが目標です」(完)(2007/5/8)


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