進化するがんの骨転移治療
新しい骨吸収阻害剤登場
点滴がより手軽に 


  がんが進行するに連れて起きる骨転移。激しい痛みのほか、骨折を起こすこともあり、患者の生活の質を落とすとともに、闘病意欲をそぐことにもなる。その治療に使われる骨吸収阻害剤「ビスフォスフォネート」に新薬が登場、より手軽に治療できるようになった。

痛みに骨折、まひ

 骨転移の起きやすさはがんによって異なる。血液がんの一種の多発性骨髄腫ではほとんどで転移するほか、乳がんや肺がん、前立腺がん、腎がんなどが骨転移の多いがんとして知られる。
 骨転移による痛みは激しい。癌研有明病院化学療法センターの高橋俊二副部長は「がんの激しい痛みの半分は骨転移によるもの。モルヒネでも抑えきれないことが多い」と説明する。
 さらに骨がもろくなって折れたり、脊髄(せきずい)の神経が圧迫されてまひが出たりするため、患者は寝たきりになる。多発性骨髄腫などでは、寝返りを打つだけであちこちの骨が折れる悲惨な状態に陥ることもあるという。
 血流に乗って骨に入ったがん細胞は、古い骨を溶かす破骨細胞を働かせて骨を壊させる。このため痛みが出るし、骨がもろくなる。さらに壊れた骨からは細胞増殖因子が出るため、がん細胞は活発に増えるようになる。
 ビスフォスフォネートは骨に付着、破骨細胞に取り込まれ、その働きを抑える。いわばがん細胞に狂わされた骨の新陳代謝を元に戻してくれる。

月1回、15分

 ビスフォスフォネートは日本では、2004年に「パミドロネート」(商品名アレディア)が乳がんの骨転移に認可され、今年4月には「ゾレドロネート」(同ゾメタ)が幅広い骨転移への治療薬として認可された。
 アレディアの臨床試験で、偽薬を投与した人に比べ痛みが大幅に減るだけでなく、骨折やまひなどの合併症が約30%も減ることが分かっていた。ゾメタの効果はさらに大きく、合併症の減少率は約40%に達した。
 同病院では、骨転移を起こした人にはまず、化学療法、内分泌療法などの原発がん治療にビスフォスフォネートを加えている。それでも痛みがとりきれない人には放射線治療や鎮痛剤投与、手術を行うのが基本。現在、約150人が外来で治療を受けている。
 ゾメタは投与時間が短いのも利点。アレディアは月1回2―4時間の点滴が必要だったが、ゾメタは3―4週間ごとに15分の点滴ですむ。
 「月1回でも、時間がかかる点滴を嫌がる患者さんもいたし、病院側にも負担だった。ゾメタは処置室でも手軽にできるし、患者さんの負担も少ない」と高橋副部長。

有意義な時間を

 まだ科学的には立証されていないが、予防投与への期待も高まる。高橋副部長も「薬の作用メカニズムからみて、早く使うほど効果がでる可能性がある」と話す。現在、欧米でその臨床試験も行われているという。
 問題は骨転移へのビスフォスフォネート治療が行き渡っていないこと。高橋副部長も「早くから使用が認められた乳がんの専門医では常識になっているが、他の分野ではまだ知らない先生も見受けられる」と指摘する。
  一般に、骨転移を起こしやすいがんは生命予後が長いという。がんとともに何年も生きる患者が多いということだ。残された時間を有意義に使うことができるようになるだけに、高橋副部長は「患者さん一人一人の病態を把握し、ビスフォスフォネートをうまく使ってほしい」と話している。




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