『定年・退職うつ-3


 三寒四温で改善
中村純産業医大教授

 
 仕事を成し遂げたという充実感や開放感、あるいは目標や生きがいを失ったような寂しさ、むなしさ―。人によってさまざまに感じる定年や退職をきっかけに、うつ病になる人が増えているという。産業医大(北九州市)の中村純教授(精神医学)に聞いた。

 ―薬物療法は。

 「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)という抗うつ剤を最初から使うことがほとんどです。うつ病患者では、脳内の情報を伝えるセロトニンなどの物質が減ったり、流れが滞ったりしています。SSRIは神経細胞から放出されたセロトニンが細胞に再びり込まれるのを妨げることで、神経間の伝達をつかさどるシナプスの間でのセロトニンを増加させ、症状を改善します」
   
―効き目は。

 「良く効く人と、あまり効かない人がいますが、薬の効果が出るのは、飲み始めて二週間程度たってから。三寒四温に例えられるように、症状は徐々に良くなっていきます。昔の抗うつ剤は排尿障害やふらつきなどが起きることがありましたが、今の薬は副作用が少なくなっています。不安が強い人には、抗不安薬を処方することもあります」

―薬はいつまで飲み続けるべきでしょうか。

 「うつ病は1年以内に20数%、10年以内だと約70%が再発します。きっかけは人間関係や家族の病気など。薬は服用を始めて9カ月から1年は続けるべきです。高血圧の人に『高血圧治療薬をやめましょう』と言わないのと同じように、うつ病も生活習慣病、慢性疾患と考え、長期的に治療することが必要です」

―カウンセリングも重要と聞きます。

 「うつ病の診断や薬の処方は、専門医でなくても可能です。『奥さんとうまくいっていますか』『離れて暮らす子供さんから便りはありますか』など、ちょっとしたいたわりやライフイベント上の課題に対する理解を示すことで、良くなることもあります。しかし、重症例の認知療法や集団精神療法など特殊なカウンセリングは、専門家でないと難しいといえます」  (続く)(2007/4/24)


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