レーザーで子宮頸がん治療
機能温存でき、出産可能
がん細胞だけを破壊 


  若い女性に多い子宮頸(けい)がん。妊娠、出産を望む人が多いため、いかに機能を温存して治療するかが重要になる。早期の場合、特殊な薬剤とレーザーを組み合わせた光線力学的治療(PDT)と呼ばれる方法で、その課題を克服できる。

麻酔、輸血は不要

 女性ホルモンが発症に関与する子宮体がんと異なり、子宮入り口にできる子宮頸がんはウイルス感染が原因となるため、比較的若い世代に多く、最近は20代の患者も増えている。
 早期がんで、しかも出産を望む場合、子宮の入り口を手術でくりぬく「円すい切除術」が一般的だ。ただ胎児を支える力が弱まるため、早産や流産の危険が高まり、不妊症になることもある。
 PDTはがん細胞や前がん病変に蓄積する薬剤「フォトフリン」を注射。2日後に病巣部にレーザーを照射する。すると薬が光化学反応で活性酸素を生みだし、がん細胞を壊す。肺がんなどの治療でも使われている。
  子宮頸がんでの治療手順を開発した杏雲堂病院(東京)の坂本優(さかもと・まさる)婦人科部長は「がん細胞だけをたたくため、円すい切除と違い、胎児を支 える子宮頸管が短くならず、さらに免疫物質を含んだ粘液を出す頸管腺の機能も保たれる。出血や痛みもほとんどなく、輸血や麻酔も不要」と話す。

97%が1回で効果

 同病院では高度異形成という前がん病変と、ステージ0期とⅠa期の早期がんが治療対象。Ⅰa期はさらに、表面の上皮細胞の下にある間質組織へのがん浸潤が3ミリ以内のⅠa1期に限られる。
 「もう少し深くても対応できる可能性はあるが、その場合、リンパ節転移も考えられるので、化学療法との併用になる」と坂本部長。
 まずフォトフリンを静脈注射。2日後に病巣に弱いレーザー光を当てる。照射範囲は直径1センチの円形で、1カ所には6分程度当てる。五輪マークを描くように重ねながら、病巣全体をカバー、治療時間は2時間程度。
  治療は週に二人のペースで、患者は全国から集まるため、現在は2カ月待ちの状態。1989年以降、450例以上を実施。一回の治療でがんが完全に消えた 患者は97%に上る。治療3カ月後の効果判定で取り残しが判明したのは3%。この場合もほとんどは再度のPDTで対応できた。


高価な装置が壁

 欠点は光に反応する薬を投与するため、治療前後に厳重な遮光管理が必要なこと。投与から4日間は、ロウソク10本分の明るさに当たる10ルックスの薄暗い部屋で過ごし、テレビも厳禁。その後、徐々に明るくできるが、3週間の入院が必要だ。
 病室の外では黒いずきんや手袋で顔や手を覆う。退院後も1―2カ月は光過敏症が出るため、日常生活に制約が出る。
 治療を受けた東北地方の女性は「多少、おなかの痛みはあるが、想像していたほどではない」。別の女性は「私は痛みがなかった。光に当たれない以外は普通に過ごせ、病室で筋トレをしています」と話す。
 ただPDT実施施設はまだ全国で約15カ所。専用のレーザー照射装置が1台約4,500万円と高額なことがネックになっている。しかし肺がん治療では最近、光過敏症が起きにくく入院が一週間程度ですむ薬と、1台約800万円の照射装置が認可された。
 坂本部長は「PDTを希望する女性は多いが、『3週間も仕事を休めない』とあきらめる人もいる。子宮がんでも早く使えるようにしてほしい」と訴えている。



ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2005 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved