難病ALSに新治療法
ビタミン類似物質を投与
 運動神経が侵され、筋肉がやせ衰えて呼吸もできなくなる進行性の難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)に対し、日本で開発された新治療法が徳島大病院で試みられている。生存期間延長などの効果が見られ、5月に横浜で開かれた日本神経学会でも報告された。実際の効果を確かめるためには大規模で厳密な臨床試験が必要とされている。
▽生存期間が1カ月延長
 ALSは原因不明で、まだ有効な治療法はないが、脳内の神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰になり、神経細胞死を引き起こすことが一因との説がある。
 同病院神経内科の梶龍児教授と和泉唯信助手らのグループは、ビタミンB12に似た物質「メチルコバラミン」が、このグルタミン酸の影響を軽減すると考え、発病後5年以内の患者34人を対象に臨床研究を実施した。
 患者は2群に分けられ、片方の群の18人には50mgのメチルコバラミンを週2回筋肉注射し、非投与群16人と比較した。
 その結果、非投与群は、半年―2年8カ月で全員死亡。これに対し、投与群は18人のうち11人が投与から1年―3年7カ月たった時点で、人工呼吸器を着けずに生存していた。
 平均生存期間は投与群18.5カ月プラスマイナス13.6カ月、非投与群17.7カ月プラスマイナス9.0カ月で、平均で約1カ月、生存期間が延びた。
 「メチルコバラミンは、体内に入るとビタミンB12と同じ作用をする。これまで末しょう神経障害や悪性貧血の治療に使われてきた。今回の投与量は、これらの1日投与量の33倍に当たる」と和泉助手。
▽筋力も上昇
 ラットの神経細胞を使った基礎実験では、グルタミン酸を入れると細胞は死ぬが、事前にメチルコバラミンを加えておくと、通常濃度では効果はないが、濃度を上げると細胞死を抑制することが分かっていた。
 また、ALS患者に対し、少し多めに使うと筋肉のピクつき(筋線維束れん縮)が軽くなるとされていた。
 このため10年ほど前から、当時京都大にいた梶教授らが短期的な臨床研究を開始。毎日メチルコバラミンを患者に筋肉注射して2週間調べた結果、投与群では筋活動電位が有意に高くなり、筋力も上昇することが確認されたという。
 和泉助手は「この治療法でも病気の進行を止めることはできない。ALSは人によって進行の早さが違い、見分けがつかない。今回も、たまたま進行の遅い人たちが投与群に多く入ってしまったこともありうる。治療効果を確かめるためには、より大規模な試験が必要」と話している。



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