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細胞増殖を促し、血管を新生する働きがあるタンパク質を使い、心臓手術後の回復を早めたり、血管障害を治療する臨床試験に京都大医学部の米田正始(こめだ・まさし)教授(心臓血管外科)と再生医科学研究所の田畑泰彦教授(組織工学)らのグループが成果を挙げている。タンパク質の量産態勢も整い、臨床応用に向けた研究は本格化しようとしている。
▽太い血管生む
この物質は一九七四年、牛の脳下垂体で発見された塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)。人体にもある物質で、既にやけどによる皮膚のかいようや床擦れの治療薬として製品化されている。
その血管新生作用は狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの冠動脈疾患のほか、糖尿病で起きる閉塞(へいそく)性動脈硬化症など脚の血管障害の治療でも注目されている。
血管新生因子にはこのほか、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や肝細胞増殖因子(HGF)などがあるが、米田教授は「VEGFでできるのは毛細血管がほとんどだが、bFGFでは太さが五十―百マイクロメートルを超えた小動脈のレベル。できる血管の質が違う」と語る。
▽治癒まで3分の1に
最初に行われたのは胸骨再生医療。心臓手術では、胸の中央を縦に走る胸骨をいったん取り外すため、術後に痛みなどの症状が治まるにはしばしば三週間以上かかる。その後も、棚の上などに物を上げる作業や体をねじる動作は難しく、本格的な社会復帰には三カ月程度が必要になる。
京大病院では昨年十一月、冠動脈疾患を患った五十代の女性のバイパス手術にbFGF治療を併用した。女性は一週間で痛みが消え、二週間ですっかり元気に。「治癒までの期間が三分の一程度になる」と米田教授。高齢者や糖尿病、腎不全などがある重症患者ほど利点があるという。
bFGF二百マイクログラムを浸したゼラチンシートを胸骨部分に固定。シートは四週間で水と二酸化炭素に分解され、その際、bFGFが徐々に放出され、胸骨に栄養を補給する血管の再生を早める。
bFGFは全身に使うとがんを悪化させる恐れがあるが「あくまで局所の治療で、放出量はごく微量。しかもすぐ分解される。つまり副作用の可能性は極めて低い。それを今、証明しつつある」と米田教授。
▽治療態勢整う
下肢血管障害では今年二月、指定難病のビュルガー病(バージャー病)の二十代の男性に一例目を実施。足の付け根から血管の閉塞部までの四十カ所に、計二百マイクログラムのbFGFを含んだ直径数十マイクロメートルのゼラチン粒子を筋肉注射した。
男性は他の病院で血管再建手術を受けたが、効果はなく、足の指二本を切断。痛みで歩けず、車いす生活だった。しかし、bFGF治療から三週間で普通に歩けるようになり、エックス線検査でも、閉塞部に血管が再生していた。足の皮膚のかいようも既に縮小、仕事に戻ったという。
六月一日には二例目として、六十代の閉塞性動脈硬化症の男性を治療。一週間後には痛みが激減、鎮痛剤の注射が不要になるなど、経過は順調だ。近く三例目の治療も予定している。
現在、約五十人が治療を待っているが、手作りだったbFGF粒子の量産態勢も整った。米田教授は「症例を重ね、なるべく早く高度先進医療の指定を受けたい」としている。
米田教授らはこのほか、冠動脈が広範囲に傷み、パイパス手術もカテーテルによるステント治療も無理な重症患者を救うため、bFGFシートで胃大網動脈と冠動脈をつなぐ血管を作り、胃周囲の血管から心臓に血液を供給する治療法も既に開発、患者を募っている。
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