社会参加が治療のゴール
「統合失調症」普及進む
 統合失調症が新しい病名となってから1年近くがたった。呼称変更を決めた日本精神神経学会の佐藤光源理事長(東北福祉大大学院教授)は「統合失調症は病気が治ったというだけでは駄目。家族や周囲の協力を得て、本人が社会に参加できるようになることが治療のゴール」と話す。治っても、仕事に就ける人はまだ少ないのが現状という。
▽自分から病名を口に
 この病気は「治らない」という誤ったイメージが長く続き、患者の人格の否定や誤解・差別を生み出してきた。しかし、精神医学と治療薬の発達により、過半数が実際に治ることが分かってきた。最近は副作用が少ない新世代の抗精神病薬が開発され、より有効な治療が可能になっている。
 「新しい病名になって、医師が患者さん本人に病名を伝えられるようになってきた」と、同理事長は治療へのプラス面を指摘する。
 患者やその家族でつくる「全国精神障害者家族会連合会(全家連)」の相談室長、良田かおりさんも「毎日、家族や当事者からの相談に乗っているが、呼称変更後は、今まで相談できなかった人が自分から病名を口にできるようになり、相談がしやすくなった。大きな変化を感じる」と話す。
 社会参加に向けて「病気が治っているかどうかは、症状が残っているかどうかではなく、社会で生活ができるかどうかで判断される。その点で、統合失調症は他の診療科と症状の評価が異なる」と佐藤理事長。
 昔は症状の有無だけで決めていたため、少しでも症状が残っていると長期入院が続き、その結果、社会復帰の機会も失うことになってしまったという。
 統合失調症は「自他を分ける境界が崩れる症状」が診断基準の一つとされているが、急性期には幻覚や幻聴により、人格そのものが揺さぶられ、自分との区別がつかなくなってしまう。
▽自分で対処できれば
 同理事長は「しかし、薬が効いて治り始めると、幻聴が聞こえてきても放っておける距離ができる。3カ月から半年もたつと“あれはあれ、私は私”となり、自分の人格が動揺しなくなる。つまり、そういった症状があるかないかではなく、どこまで幻聴などに振り回されるかが問題」と説明する。
 実際、病気が治り、社会復帰した人でも幻覚や妄想がみられることがあるが、自分で対処できれば全く問題ないという。
 佐藤理事長は「統合失調症は治るようになったが、再発しやすいことも事実。そうさせないためにも、家庭や地域社会、職場の理解と受け入れが非常に大事」と話している。



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