新検査法導入に期待
新生児スクリーニング
20数種の疾患を判定

 赤ちゃんが誕生した際に、先天代謝異常症を見つけ、障害を予防する新生児スクリーニングは現在、フェニルケトン尿症など6つの疾患が対象になっており、公費で調べられている。これに代わる新たな検査法として、最近「タンデムマス」という質量分析計が登場、安価で一挙に20数種類の疾患を検出できる利点があり、日本の新生児スクリーニングも大きく変わろうとしている。
 
 ▽タンデムマス
 タンデムマス導入に取り組んでいるのは、島根大医学部小児科の山口清次教授ら。
 同教授は「タンデムマスによる新検査法は、血液中の多種類の微量成分を高感度に測定でき、新生児スクリーニングを革命的に変える。既に欧米やアジア各国でも導入が進んでいる。乳幼児突然死症候群(SIDS)などの原因解明にも威力を発揮しそう」と話す。
 現在の方法(ガスリーテスト)は、ろ紙に新生児の血液を微量染み込ませて検査するが、タンデムマスでも、ろ紙をそのまま利用できる。
 新検査法で発見できるのは、現在対象となっているフェニルケトン尿症など3つに加え、同じアミノ酸代謝異常症のアルギニン血症など7疾患と有機酸代謝異常症が9疾患、脂肪酸代謝異常症5疾患の計24疾患。

 ▽中間代謝物に毒性
 これらの疾患もすべて早期発見によって、障害予防が可能という。
 「代謝は、食物から摂したものが、さまざまな酵素によって体内で形を変え、必要なものを合成したり、エネルギーを取り出して行く過程。酵素に不具合があると、代謝が途中で止まり、代謝できなかった物質が体内にたまる。この物質が害を及ぼすと代謝異常症になる」と同教授。
 有機酸代謝異常症は、アミノ酸などの代謝過程の障害で、中間代謝体である有機酸が体内にたまる病気。
 脂肪酸代謝異常症は脂肪酸を燃焼してエネルギーをつくり出す代謝過程での障害で、うまくエネルギーが出てこない。
 これらの代謝異常症では、生まれてまもなく意識障害や呼吸障害などを起こして原因不明のまま死亡したり、後遺症に悩まされる例が少なくない。原因不明の知能の遅れやSIDS、インフルエンザ脳症、ライ症候群などの一因になっている可能性もあるとみられる。

 ▽年間5万件を検査
 「現在スクリーニングしている6疾患は、放っておくと必ず障害が出る。新検査法で分かるようになる病気では、生後1カ月-3歳ぐらいの間に発病すると命にかかわる急性脳症などが起こるリスクがある」(同教授)  しかし、これまでの研究で、このような病気でも何もなく3歳を過ぎれば、発症の危険性は減ることが分かってきた。体質を早く知って3歳ごろまで用心することで正常な発育が期待できる。
 有機酸代謝異常症の治療は、食事療法によるアミノ酸の制限と、錠剤の「カルニチン」の摂取。カルニチンは、体内にたまった有機酸と結合して尿へ排出する。
 脂肪酸代謝異常症の場合は、エネルギーを出しにくい体質なので、長時間の空腹を避けたり、風邪などで調子が悪いときは早めにブドウ糖の点滴を受けると予防できる。
 現在、日本では約10施設がタンデムマスを導入、福井大では1997年から研究を始めている。
 山口教授は「タンデムマスは1台で年間5万件の検査が可能。日本の出生数から単純に計算すると27台あればよいことになる。現在の検査法で分かるガラクトース血症など3疾患は、タンデムマスでは判定できないので、双方を並行して実施する必要がある」と話している。

 

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