復活したサイバーナイフ
体に優しい定位放射線治療
副作用抑え、効果追及

  脳の奥に潜む腫瘍(しゅよう)を狙い撃って治療する脳定位放射線治療。その一つ、サイバーナイフによる治療はしばらく中断を余儀なくされていたが、昨年から改良した新型機が普及、各地で治療が再開している。
 ▽治療ロボット
 低線量の放射線をさまざまな角度から照射、病巣に集中させる一方、周囲の正常細胞の被ばくは抑えるのが定位放射線治療。副作用を抑えながら、治療効果を最大限に発揮することを狙う。
 CTなどの画像診断で、病巣の位置特定が向上したため実現した技術。同療法にはこのほか、加速した電子ビームを発射するリニアックを患者の周囲に回転させるエックスナイフ、多数のガンマ線ビームを一カ所に集中させるガンマナイフがある。
 サイバーナイフは自動車工場などで使われる六軸制御の産業ロボットにリニアックを取り付けたもの。四方八方から1ミリ以下の精度でエックス線を照射できる。巡航ミサイルの航法技術を応用した位置認識システムも備え、もし治療中に患者が動いても、10ミリ程度までは自動修正する。
 だが2003年3月、当時の販売会社が手続きミスで薬事法違反に問われ、厚生労働省が回収命令を出し、事実上、治療できなくなっていた。
 その後、販売会社が替わり、5月末現在で全国13病院に導入された。
 ▽1200本照射可能
 大阪府吹田市の大阪大病院も昨年12月から治療を再開した。
 まず患者の精密なCT画像を撮影。治療時には、天井の2カ所に備えたエックス線撮影装置による画像と事前のCT画像を比較して位置を決め、照準を合わせる。
 患者には、顔に合わせメッシュ状のプラスチックで作ったマスクをかぶせ、頭部を固定。金属製のフレームを頭にピンで固定するガンマナイフと違い、痛みは全くない。
 エックス線は、100カ所の地点からそれぞれ12方向に照射可能。合計1200本うてる計算になる。さらに、リニアックの先端のキャップ状の器具を変えることで、ビーム幅を5―60ミリの間から12種類選択できる。
 病状に合わせてこれらを組み合わせ、コンピューター制御で点描のように病巣に照射を重ねる。同病院の塩見浩也(しおみ・ひろや)医師によると「実際の治療で使うのは100本からせいぜい200本。治療時間は1時間程度」。この間、じっと寝ているだけだ。
 ▽秘めた実力
 従来の全脳照射では2―4週間かかる治療が、わずか1日、分割照射をしても1週間程度ですむという。分割照射は一回の線量を抑えられ、照射と照射の間に、被ばくした正常細胞が回復するため、さらに体に優しい。
 「サイバーナイフは分割照射でも精度が落ちないのが大きな利点です」と塩見医師。阪大では「大きさ3センチ程度まで、数は3つまで」の腫瘍が対象だが、これより大きくても分割照射で対応可能。形が複雑な場合や、視神経など重要な神経に近い病巣の治療も得意だ。
 また、ガンマナイフは頭部だけが対象だが、サイバーナイフは首まで治療が認められている。能力的にはエックスナイフと同様、肺や肝臓などの体幹部の治療も可能。同大の井上武宏(いのうえ・たけひろ)教授は「体幹部の治療まで認められて初めて、その実力を発揮することになる」と適応拡大に期待を寄せる。
 エックスナイフでの治療を手掛ける癌研有明病院放射線治療科の山下孝(やました・たかし)部長も「定位放射線治療はがん治療の地平を広げる。ただ、その実力を発揮させるには、医学物理士制度など、医療制度の一層の拡充が必要だ」と指摘している。

サイバーナイフ設置状況一覧


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