日本の特殊性浮き彫り
注目の胃かいよう指針
 国内に100万人前後の患者がいるとされ、欧米人に比べて日本人がかかりやすい胃かいようについて、厚生労働省の研究班がまとめた初の診療指針に注目が集まっている。
▽病態と原因に応じた治療を
 この薬には日本だけで使われているものが多く、国内で1000億円以上の市場があるといわれる。しかし、以前から効果を疑問視する声は少なくなかっただけに、指針は日本の医療の特殊性も浮き彫りにした形だ。
 「胃かいようでは従来、さまざまな薬が経験的に使われてきたが、病態と原因に応じた治療を行うべきだ。指針は、これを支援するのが目的だ」と研究班長の菅野健太郎・自治医大消化器内科教授。
 日本人の胃かいようの原因は9割がヘリコバクター・ピロリ菌による感染で、残りの大部分も、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)の副作用だと分かってきた。
 国内外の約820の論文を分析して作られた今回の指針でも、ピロリ除菌は最優先の治療だ。抗生物質2種類と、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の3剤併用を推奨しており、成功率は90%程度という。
 アレルギーなどで除菌治療ができない場合や、NSAIDが原因の胃かいようでは、PPIが第1選択薬。次いで、別の仕組みで胃酸分泌を抑える「H2受容体拮抗(きっこう)薬」を勧めている。
 一方、胃粘膜を保護し、国内の処方薬の中心となっている「防御因子増強薬」で効果を認めたのは、スクラルファート、ミソプロストール、エンプロスチルだけだった。
▽自然に淘汰
 3種類では、スクラルファートが最もよく使われる。ほかの2種類は、同増強薬の中でも「プロスタグランジン製剤」と呼ばれ、NSAIDのかいように効果が高い半面、子宮などに副作用がある。
 関係学会の調査によると、同増強薬は1―2剤をPPIまたはH2受容体拮抗薬とともに処方するケースが大半。しかし、指針は、これも根拠が不十分だとした。
 同増強薬には30年来、使われているものも多く、ある専門医は「効果は乏しいが、副作用も少ないので処方されていたのが実態」と解説する。
 菅野教授も「自分は何のために薬を飲むのか、と考える人が増えれば、こうした薬は自然に淘汰(とうた)されるのではないか」と話している。



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