椎間板を加熱し腰痛治療 
 負担小さく7割に効果
高周波熱凝固法

  加齢やスポーツによる過重な負荷などのため、椎間板(ついかんばん)が変性して起きる椎間板性腰痛。鎮痛薬や運動療法などの効果が上がらない場合、治療法は手術しかなかったが、患部に針を刺して高周波で加熱する椎間板内高周波熱凝固法(IDET)という新しい治療が欧米を中心に広まってきた。国内では大阪大病院が初めて導入し、患者への負担が小さい治療法として普及が期待されている。
 ▽遅れる新薬投入
 腰痛にはいろいろな種類があるが、同大医学部の阪上学(さかうえ・がく)助手(麻酔科)によると、長時間座ったままだったり、立ったままだったりすると、痛みにがまんできなくなるのが椎間板性腰痛の特徴。腰への負担が大きい姿勢を長時間続けると、椎間板に圧力がかかって痛みが増し、じっとしていられなくなる。
 悪化すると日常生活に支障が出るほか、スポーツ選手が競技を断念するケースも多い。米国には300万―500万人の患者がいるとされ、国内でも200万人程度の患者がいると推定されるという。
 椎間板は洋菓子のバウムクーヘンの中にゼリーが詰まったような構造。外側を線維輪、内側を髄核といい、背骨を構成する骨と骨の間に挟まれ、クッションのような役割を果たしている。
 椎間板性腰痛の原因は「髄核から水分が抜けて弾力を失い不安定になるのに加え、線維輪に亀裂ができて周囲から神経線維が入り込むため」(阪上助手)とみられる。
 これが背骨の腰の部分で起きると、不安定になった部分が周囲の神経や新しく入り込んだ神経を刺激するというのだ。
 ▽7割に効果
 重症の場合、従来は痛みがある部分の腰椎(ようつい)をボルトなどで固定する手術しかなかった。だが手術は患者の負担が大きい上、日常生活への支障はなくなっても、スポーツ選手が競技を再開することは困難。固定した部分の上下に負担がかかり、新たな腰痛の原因になる問題もあった。
 阪大病院がIDETを導入したのは約3年前。これまでに10―50代の20人弱を治療し、痛みの解消やスポーツの再開など、7割に効果がみられたという。
 治療の際は患者に局所麻酔をしてうつぶせに寝てもらい、エックス線で位置を確認しながら、筒状の針を患部の椎間板に刺す。針を通して針金状のカテーテルを損傷した線維輪の内側に沿うように挿入する。
 その後、カテーテルに高周波電流を流して線維輪を加熱。12分間かけて60度から90度まで温度を上げ、そのまま4分間保って治療は終了。感染症を防ぐため抗生物質を投与し、4、5日様子を見るが、長期間の入院は不要だ。
有力な治療手段に
 「治療後、加熱の影響で一時的に痛みが増す場合もあるが、2―4週間ほどすると多くの患者で痛みが和らいでくる」と阪上助手。加熱した部分の線維が硬くなって椎間板が安定し、線維輪に入り込んでいた神経線維も熱で変性して痛みを感じなくなるのだという。
 米国では約5年前から行われ、既に約4万人の患者に実施。60―80%に「痛みが軽くなった」「活動範囲が広がった」「鎮痛薬の量が減った」などの効果が出ている。
 国内ではまだ保険適用されておらず、阪大病院では学内の先進医療審査会の承認を得て、費用は研究費で負担している。
 「局所麻酔で短時間で治療できる上、副作用の報告もほとんどない。将来保険適用になれば、慢性の腰痛で悩んでる人には治療の選択肢の一つになるだろう」と阪上助手は話している。


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