早期がん発見できる内視鏡
短波長光で毛細血管観察
がんセンターなど開発


  波長が短い特殊な光を使い、従来より早期のがんを発見できる消化器内視鏡を、国立がんセンター東病院消化器内科の佐野寧(さの・やすし)医長とオリンパスが共同開発した。狭帯域光観察(NBI)と呼ばれる手法を用い、消化器表面の微細構造や毛細血管を観察できるのが強みで、6月に発売された。

赤血球も見える

 内視鏡の開発から約50年。この間、消化器表面の色や形をいかに正確に再現するかを追究し、早期がんの発見率は飛躍的に伸びた。しかし、より早期のがんを見つけるにはこの方法では限界がある。そこで佐野医長らが目を付けたのが、波長の短い光だ。
 光は波長が長いほど身体の奥深く入り込む特性を持つ。消化器がんができる粘膜表層の細かい画像を得るには、浅いところで反射する短波長の光だけの方が良い。従来の赤、緑、青の三原色による白色光では、奥まで入った長波長の赤色光の反射が〝雑音〟となり観測を妨げるからだ。
 さらに血中の赤血球がよく吸収する、特定の短い波長の光を使えば、毛細血管をきれいに描き出せる利点もある。
 佐野医長は「毛細血管や表面の微細構造がくっきり見え、拡大内視鏡とともに使うと、赤血球が動く様子さえ観察できるほど」と説明する。

血管で診断

 活発に増殖を繰り返すがん細胞は、栄養を運ぶ血液を多く必要とし、病巣には血管が増えてくる。毛細血管や微細構造の変化で超早期のがんを見つけられることになる。
 この「血管診断学」は肝細胞がんなどで既に使われているが、消化器の分野では血管を調べられなかった。「NBIの登場で、消化器でもがん病巣の毛細血管パターンが明らかになりつつあり、早期診断が可能になるだろう」と佐野医長。
 同病院の大腸検査では「平たん陥凹型」と呼ばれる前がん病変の直径10㍉以下のものは、従来の内視鏡の2倍程度も見つかったという。このタイプはがんになる危険が高いが、隆起するポリープと違って診断が難しく、見落としが多かった。
 正確な診断のため、従来は疑わしい部分に吹き付けていた色素も、NBIでは不要で検査効率が向上、経費も減る。組織を採取せず、内視鏡での悪性度診断も可能で、患者の負担も減る。

診断法を変える

 NBI内視鏡の開発は7年前に始まり、同センター中央病院も含めた全国約20の施設に試験導入してデータを収集。欧米では昨年、既に発売されている。
 使うのは最も赤血球に吸収されやすい、中心波長が415ナノメートル(ナノは10億分の1)の青色光と540ナノメートルの緑色光。しかもそれぞれに含まれる波長の範囲は30ナノメートルと、とても狭い狭帯域光だ。
 従来の白色光光源の前に、この光だけを通すフィルターを設置。スイッチ一つで従来型とNBI観察を切り替えられる。
 威力を発揮するのは上部消化管では咽頭(いんとう)がんや喉頭(こうとう)がん、早期食道がん。さらに胃液の逆流で生じ、がんになりやすいバレット食道。大腸は平たん型病変などの前がん病変の発見や悪性度診断。
 東病院では1年ほど前から通常の検査態勢に組み込んでいる。上部消化管では食道がんの既往があるなどのハイリスク患者の定期診断に。さらに大腸では、一般検診にも従来の検査と組み合わせて広く使っている。
 佐野医長は「従来の肉眼での観察とは発想を替えた画期的なもの。消化器がんの診断法を変えることになると思う」と話している。


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