突然死に結び付くケースも
失神の原因はさまざま
見極めが非常に大事
 一時的に意識を失ってしまう「失神」。しばらくして意識が戻ると、本人も周囲も大したことはないと思うかもしれない。しかし、失神の原因は多岐にわたるので、おろそかにしない方がよい。原澤循環器・内科クリニック(福岡市)の原澤泰比古院長は「怖がりすぎても、大したことないと思ってもいけない。特に心臓の病気にかかわる失神の場合、突然死に結び付くので、その見極めが非常に大事」と指摘する。
▽脳に原因、少ない
 一般的な例としては、暑い日の学校の朝礼で立ち放しだった生徒が倒れたり、強いせきが続いて意識を失うケース。かなり飲酒した人が排尿時に失神するケースなどは、それほど心配はいらない。
 一方、不整脈や大動脈弁狭さく、原発性肺高血圧症などの心臓病が原因の失神は適切な治療なしには命取りになるという。
 「医師を含めて、失神は何となく、頭(脳)に原因があると思いがちだが、失神の疫学研究によると、脳卒中などの脳血管の病気が失神を来すことは意外に少ない。意識障害を生じるとすれば、むしろこん睡状態になる」と同院長。
 このため、失神の後に頭をエックス線CTなどで検査しても原因を突き止められないことが多いという。
 「ただし、一瞬、目が見えなくなったり、体のどこかがしびれたり、まひが出るなど随伴症状がある失神は脳に関係している場合がある」(同院長)
▽問題は心臓
 朝礼で倒れたり、献血をしたときに失神するケースは「神経介在性失神」と呼ばれ、若い人に多いとされてきたが、高齢者に見られることもあるという。
 立ち放しで血液が足の方へ下がったりして、心臓の血液が少なくなったときに、精神的なことも加わって、心臓にあるセンサーが脳に誤った情報を伝える結果、心拍数を下げ、血管を開く指令が出され、失神するという仕組みだ。
 このほか、コンサートなどで熱狂し、精神的な興奮で起こる失神もある。
 十代の男の子が数カ月に一度の頻度で失神を繰り返していた。そうするうちに本人も周囲も失神しやすい体質と考え、きちんとした検査を受けずに過ごしていたところ、数年後に突然死してしまったケースがあったという。
 「“慣れ”もあって原因の探索が不十分だったケースだ。最大のチェックポイントは心臓が原因かどうか。それが否定できれば一安心できる」と原澤院長。
▽胸痛に注意請
 心臓に関係する失神で日本人に多いのが、安静時に起こる「冠れん縮性狭心症」。胸痛が生じた後にしばしば失神を起こす。患者20人に1人程度が失神を起こすとされている。
 失神を伴うこの狭心症は、突然死を起こす可能性があるので確実な治療を要する。失神の有無にかかわらず、この狭心症には「カルシウム拮抗(きっこう)剤」が特効薬となるという。冠れん縮性狭心症とは対照的に、一般の狭心症では失神を起こすことはまれだ。
 また、以前に心筋梗塞(こうそく)などの心臓病を経験したことがある人の失神も要注意だ。致死的な不整脈が失神の原因である可能性が高いという。
 高齢者の食後低血圧では、時には失神することがある。これは食後に血液が消化管に集まる結果、血圧が下がることによる。もともと貧血がある高齢者にこのような血圧低下が起これば、より失神しやすくなる。
 原澤院長は「何よりも、担当する医師が、失神時の状況を本人や周囲の人から丁寧に聞くことが大事。それによって、ほぼ原因と治療方針が定まる。失神について十分な知識と診療経験を持った医師を受診することが大事」と話している。



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