前立腺がんの放射線治療
生活の質を重視
効果は全摘とほぼ同じ

 早期前立腺がんの治療には大きく分けて手術による全摘と放射線照射の2つがある。天皇陛下の前立腺がん手術で、がんの早期発見が可能なPSA検査の必要性や全摘手術がよく知られるようになった。もう1つの治療法で、米国などでは広く普及している放射線療法は、治療効果は全摘手術とほぼ同等で、治療後も生活の質(QOL)が高く保てることが長所とされている。
 
 ▽ブラキーセラピー
 「放射線治療は、外照射とブラキーセラピー(組織内照射)に分けられる。ブラキーはギリシャ語で“近い”という意味。米国では、この治療法と全摘手術がほぼ同じくらい実施されつつある」と金沢大医学部泌尿器科の溝上敦(みぞかみあつし)講師は話す。
 外照射は、文字通り体の外側から放射線を当てる方法だが、前立腺近くの臓器にも当たるので、ぼうこうや直腸に影響が生じる可能性もある。
 ブラキーセラピーは小線源療法とも呼ばれ、ハイドース(高線量照射)とロウドース(低線量照射)の2つに分かれる。
 高線量照射は、下半身に麻酔をかけ、あおむけになった患者の会陰部から針を前立腺内に差し込み、針金状の放射線源を、針の中空部分を通して前立腺内部に到達させて、短時間照射する。
 前立腺内から照射するため、他臓器に影響が少ない。通常、10数本の針を前立腺内に差し込む。

 ▽永久埋め込み
 「低線量照射も、やり方は同じだが、針先から長さ約5ミリのヨード125の放射線源50-100個を前立腺内に押し出して永久に埋め込む。弱い放射線が長い間がん細胞をたたくことになる。日帰り手術ででき(日本は2-3泊)、QOLが良いとされるため、米国ではブラキーセラピーの8割が埋め込み」(同講師)
 埋め込みは、日本でも昨年秋、認可されて東京医療センター(目黒区)などで始まり、今後、急速に普及しそうだ。  ただ、永久埋め込みは、前立腺辺縁部の効果が弱いため、完全な早期がんに適用されるという。
 高線量照射は、日本では既に金沢大病院など10数施設が実施している。
 「金沢大では既に100例を超えた。患者さんには針を差し込んだ後、5-7泊してもらっている。照射は1回10数分間。埋め込みと比べると強い放射線を出すイリジウム192を3回、針の中を通して前立腺で照射する。1回6グレイ、計18グレイの線量を当てる」と同講師。
 照射は夕方、翌朝、その午後の計3回で、その間、針は刺さったままで、体は不自由な状態が続くが、痛みは少ないという。その後に少ない線量の外照射を1カ月間、通院か入院して行う。

 ▽体への負担少ない
 前立腺の早期がんは、画像では正常部分とがん部分の区別がつかず、双方が入り組んでいることが多いため、ブラキーセラピーでは前立腺全体に放射線を当てる。
 照射範囲の設定では、エックス線CT画像により、線源を差し込む位置が細かく決められる。
 日本の早期前立腺がん治療は、全摘が大部分を占めているが、神経が温存できても勃起(ぼっき)障害が約5割。尿漏れも5%程度ある。
 「手術の良い点は、がんが取り切れたかどうかが病理学的に判断できることで、ブラキーセラピーでは、治療後本当によくなったかという不安感を訴える人もいる。しかし、全摘でも、がんが消えたかどうかはPSA検査で定期的に判断するしかない」と溝上講師。
 「全摘と比べると、ブラキーセラピーは①体への負担が少ない②勃起不全は20―30%だけ③尿漏れは3%程度④合併症がない-など、QOLが良いという長所がある」と話している。

 

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