国内でも埋め込み型人工心臓
移植までのつなぎに活躍
装置小型化で外出可能に
 心臓移植以外に救命の手段がない末期の心不全患者に対し、移植を受けるまでの橋渡しをする補助人工心臓は、小型化が課題だったが、本体部分が体内に収まり、患者の状態によっては外出も可能な「体内埋め込み型」装置が、このほど発売された。欧米では1400例以上の使用実績があり、国内の治験でも良好な成績が報告されている。
▽感染など問題に
 心臓は、血液を体内に循環させるポンプの役割を果たしている。心臓の筋肉の障害などでこのポンプ機能が低下した状態が心不全。補助人工心臓は、心臓の代わりにこの機能を担う。
 国民の死因のトップが心臓病の米国では、1960年代から人工心臓の開発が始まった。80年代には、ポンプ部分だけを体内に埋め込み、ポンプの動力装置を外に置いて使用する人工の心臓血液ポンプが臨床応用された。
 だがこの方式は、圧縮空気を外部から送り込んでポンプを駆動させるため、ポンプと体外の動力装置とをつなぐ各種チューブから起きる感染などが問題となった。
▽装置不良の死亡なし
 こうした中で開発が進んだのが、電気で駆動する体内埋め込み型。米国では84年から使用が始まった後、改良が加えられた。日本国内でも、96年から行われてきた治験が終了し、このほど輸入販売が始まった。
 この装置は患者の心臓は残したまま、装置と心臓を人工血管でつないで使用する。電磁石の考え方を応用し、2枚の板が開閉しながら血液を送り出す仕組みで、患者の左心室の機能を代替。全身に血液を送る。
 ポンプ部分は縦約17センチ、横約13センチ、重さ1キロ。電源供給とポンプ通気用のチューブは1本だけで、体外の小型制御装置と結ばれる。バッテリーをベストなどに入れて携帯すれば、自由に動くことも可能だ。
 製造元のワールドハート社(カナダ)会長でもある、トフィ・ムシバンド・オタワ大医学部教授は「約1440例の使用実績があるが、装置自体の不良による死亡例はない」と説明する。米国では4年間以上の連続使用も報告されている。
▽永久使用でも申請
 国内でも、東京女子医大、大阪大、九州大でこれまでに計15例が使用された。心臓移植を受けた7人の患者のうち、2人がこの装置を付けて移植を待った大阪大病院の松田暉教授は「装置内部に血栓ができる問題は依然として残り、抗血栓薬の使用は必要だが、埋め込み型になったことで感染のリスクはかなり減った」と話す。2人のうち1人の装着は約1100日に達し、世界でも有数の生存日数となった。
 大きさが約400グラムと、現在のタイプの半分以下になる装置も開発が進んでいる。
 米国では、心臓移植の候補者から外れた高齢の重症心不全患者らに対し、つなぎではない、永久使用目的の承認申請も行われている。
 松田教授は「米国では、補助人工心臓によって病院から家に戻り、何年か生きられればいい、という人もいるようだ。日本で受け入れられるかは未知数だが、われわれもこうした使用を視野に入れる必要があるだろう」と話している。



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