炎症ない慢性胃炎に診断名
機能性ディスペプシア

 消化器疾患で機能性ディスペプシア(FD)という病名が使われだした。ディスペプシアは直訳すると「消化不良」だが、医学的には胃の不快感や痛みを意味す る。機能性胃腸症とも呼ばれるが、別に新しい病気ではない。かつては胃下垂などと呼ばれ、最近では慢性胃炎と診断されていた人の一部だという。
 簡単に言うと、FDは胃もたれなどの不快感や胃痛を訴えながら、内視鏡検査などをしてもその原因が確認できない人。こういう場合、これまでは便宜的に慢性胃炎や神経性胃炎などと診断されたが、実際に炎症があるわけではない。


▽ 心理的要因が関与?

  「こういう人が外来に来ることは事実。検査で所見がなくても、症状がある限り医師は何とかしないとならない」。東北大病院総合診療部の本郷道夫(ほんごう・みちお)教授はこう話す。
 実は日米ともに、胃の不快感などを訴える人の半分以上は、内視鏡検査でも胃壁は正常だという調査結果がある。こういう「炎症なき胃炎患者」の診断名として生まれたのがFDだ。
 原因はまだよく分かっていないが、プラセボ(偽薬)をのんだり、内視鏡検査で異常がないと分かると症状が消える人が多いため、心理的要因が関与するケースが多いとみられる。このほか消化管の運動異常や内臓の知覚過敏などの関与が指摘されている。

▽ 生活習慣の改善が効果

 このため本郷教授らは医師主導の臨床試験として、ともに慢性胃炎の治療薬として承認を受けている消化管運動機能改善薬モサプリドと胃粘膜保護薬テプレノンで、FD改善効果の比較試験を行った。
 試験には全国244施設が参加、1042人の患者が登録され、最終的にそれぞれ約300人ずつに、原則2週間の投薬治療を行った。
 その結果、テプレノンでも改善効果はあったが、モサプリドの効果が上回り、胃もたれだけでなく胃痛も改善。患者の評価も高かった。
 「慢性胃炎とは別のFDという病気があることの理解は、医師たちの間にもようやく広まりだした段階。さらに広める必要がある」と本郷教授。
 薬の服用を止めると再発する人も多いという。本郷教授は「そういう場合、暴飲暴食など、どういうきっかけで再発したかを突き止め、生活習慣を改善することも効果的」と助言している。



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