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的確な病態の把握可能に がんの治療にも有望 |
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当初、小児の腎がん、ウィルムス腫瘍(しゅよう)の原因遺伝子として見つかった「WT1」遺伝子が、今や白血病の的確な診断や治療、病態把握に不可欠なマーカー(目印)として活躍している。それだけでなく、肺がんなど大部分のがんのマーカーとして使えることも分かってきた。 さらに、この遺伝子がつくるタンパク質は、体の免疫機構によって、がんに共通の“元締め”として認識されるため、ワクチンとしてがん患者の治療にも使えることも分かりつつある。 ▽治療効果が分かる
WT1は細胞の増殖に関係するがん遺伝子だ。ほとんどの白血病で、この遺伝子が大量につくられる(発現)ことを見つけたのは大阪大大学院医学系研究科の杉山治夫教授(機能診断科学)。 「血液のがん」である白血病は、発病する直前まで自覚症状がなく健康な状態で、発病して初めて白血病であることが分かる。 発病すると、血液中に血球などに混じって白血病細胞(がん細胞)が増加していることが顕微鏡で確認できる。 同教授は「他の固形がんのように早期発見ができず、またそういう考え方はなかった」と指摘する。 現在、白血病は化学療法(抗がん剤)や分子標的治療薬などにより、ある程度治せる病気になっている。 抗がん剤などが効くと、血液中から白血病細胞が消え(見えなくなり)、症状も軽快していくが、どの程度効いているのかは、顕微鏡ではそれ以上分からない。ここで威力を発揮しているのがWT1だ。 ▽再発も早期に診断
微量の血液を採るだけで白血病細胞がつくるWT1の発現量をキャッチ、白血病細胞がどのぐらい増えてきているのかが分かる。「抗がん剤が効いて、治癒しつつあるのか、効かなくなって再発しつつあるのかが手に取るように分かる」(同教授) 血液では10万個に1個、骨髄では1万~1千個に1個の白血病細胞があれば、異常として分かる。 再発が早く分かれば分かるほど、次の手が打てる。 これまでは再発するまで手探りで抗がん剤の投与を続けてきた。 「現在、白血病治療を実施している施設の多くは、WT1を使っている。再発を早期に診断する最もよい方法だから」と杉山教授。 このほか一部が白血病に進行する骨髄異形成症候群や再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症などの病気でも、WT1を使うことで、白血病化するかどうかの早期診断が可能だ。 さらに放射線被ばく者、抗がん剤治療や放射線治療を受けた人など、白血病が心配される人の早期診断にも役に立つという。 ▽固形がんの診断にも 現在、WT1検査は1回2万円かかる。保険適用に向け全国で治験が進行中だが、適用まで1~2年かかりそうだ。 白血病以外の固形がんでもWT1の発現量が高まることが分かってきている。肺がんではほぼ100%、乳がんでも80~90%で高くなり、乳がんで高い人は予後が悪いことなども分かりつつあるという。 「WT1はすべてのがんの根源的な遺伝子で、故障するとがんを起こすことになるのだろう」(同教授) 一方、WT1タンパク質を「がんワクチン」として投与し、がんの治療に利用する臨床試験も大阪大病院で進んでいる。 体の免疫システムが、WT1タンパク質をがん抗原として認識するため、人工的に合成した一部分を“標的”として投与。体内の免疫細胞がこの標的を手掛かりに、がん細胞を攻撃する仕組みだ。 ワクチンは、これまで多数の人に試みられており、現在、ワクチンの効果が望めるとして、70代の肺がん患者に投与が続けられている。 +font> |