心臓人工弁で臨床試験
日本人のデータが不可欠
 心臓の弁に障害が起こり、弁の置換手術を受けるケースは、日本で年間1万例を超える。
 「ここでは年間約850例の心臓手術が行われるが、そのうち置換手術を含む弁の手術は180~200例で4分の1に近い。決して少なくない」と国立循環器病センター(大阪府吹田市)心臓血管外科の坂東興医長は話す。
▽ライフスタイルに合った弁を
 弁の置換手術に使われる人工弁には、機械弁と生体弁があり、利用されている割合は7対3で機械弁が多い。欧米では機械弁が約9割を占めているそうだ。
 機械弁は耐久性に優れ、1回の手術でほぼ生涯使える。短所は血栓ができる可能性がある点で、血が固まらないように抗凝固薬を飲み続ける必要がある。
 一方、生体弁は牛の心膜などを特殊処理したものが使われる。15年ぐらいは使用でき、血栓の心配はないが、弁の機能が落ちれば、再手術が必要になる。
 いずれにしても、その人のライフスタイルに合った弁の選択が大事という。
 問題は機械弁で年間約5%の人が脳梗塞(こうそく)を起こすリスクがある点だ。
 「抗凝固薬にプラスして、低容量のアスピリン(抗血小板薬)を摂取することで、この発生率を下げられる可能性があることが分かってきた」(同医長)
 双方とも血が固まらないようにする薬だが、効くメカニズムが異なる。
 このことを確かめるためにこのほど、機械弁の置換手術を受けた患者を対象に大規模な臨床試験がスタート、2006年まで続けられる。心臓外科領域ではこれまでにない規模という。

  ▽国内7施設で試験
 「医師主導型の臨床試験」と呼ばれるもので、製薬会社が新薬開発で実施するのとは異なり、最善の治療法や標準的治療法を確立するために必要な証拠を得ることを目的として行われる。
 この試験の主任研究員を務める坂東医長は「欧米のデータはあるが、そのまま日本人に当てはまらない。抗凝固薬やアスピリンに対する薬物代謝や出血傾向、生活様式の差などもあり、どうしても日本人自身のデータが必要」と強調する。
 国内7施設で、参加に同意が得られた患者は無作為に2つのグループに分けられ、片方は抗凝固薬とアスピリン、他方は抗凝固薬とプラセボ(偽薬)が投与され、厳密に比較される。各グループ200例ずつ計400例が予定されている。
 坂東医長は「せっかく弁の置換手術を受けて元気になった患者さんが、脳梗塞で倒れるのでは残念。今回の試験で、日本人の抗凝固に関して証拠をつかみ、役に立てたい」と話している。



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