広がる強度変調放射線治療
がん病巣に放射線を集中
従来の難治例に威力


  前立腺や頭頸部(けいぶ)のがん中心に、強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる新しい治療が普及し始めた。放射線を病巣だけに集中、周囲の正常組織への影響を極力抑える。病巣の形が複雑だったり、視神経や脊椎(せきつい)などの重要組織に近い場合に特に威力を発揮する。

原体照射が進化

 放射線治療は技術の進歩で病巣を狙い撃ちできるようになり、子宮がんや前立腺がんなど、手術に劣らない成績を上げる分野が増えている。
 その一つが「原体照射」。ビームをさまざまな角度から、それぞれの位置から見える病巣の形に合わせて分割照射する。一回の線量は少なくても病巣では重なり合い、周辺組織への線量は減る。
 それでも複雑な形をしている場合などは周辺の損傷は避けられず、必要な線量をかけられないこともあった。
  この欠点を解消したのが米国で約15年前に開発されたIMRT。一方向からの照射をさらに分割し、形を合わせるだけでなく、病巣への正常組織の重なりを考慮、線量にモザイクのような濃淡を付ける。例えば前立腺がんでは、一日に一方向につき30パターンを七方向から実施。照射回数は計210回に達し、15分程度かかるという。
 さらに細かい照射を重ね合わせる原体照射の進化版で、病巣の一ミリ横では急激に被ばく線量が減るようになる。病巣の形や位置、大きさなどと医師側の指示を基に、コンピューターが最適の照射計画を算出する。

既に250例以上

 国内の治療実績では千葉県がんセンター京都大病院が双へき。2000年9月に導入した同センターでは、4月までに前立腺がん約150例をはじめ、頭頸部(けいぶ)がん約60例、脳腫瘍(しゅよう)約40例の治療を行っている。
  前立腺では1日二グレイの照射を約2カ月かけて38回行うのが標準。総線量は76グレイになるが、従来は副作用を避けるため72グレイが限度だっ た。同センター放射線治療部の幡野和男(はたの・かずお)部長は「治療効果の検証にはまだ時間が必要だが、感触はいい」と話す。
 現在まで再発は一例だけ。被ばくによる直腸などの出血も原体照射では15%程度あるが、IMRTではぼうこう出血が一例、直腸出血が3例で、いずれも軽度だという。
 脳腫瘍治療では悪性度が高い神経膠芽(こうが)腫が約30例と最多だが、IMRTでは平均生存期間が大幅に延びているという。

スタッフ不足

 費用も保険が適用され、難治症例を中心に全国から患者が訪れるが、主治医の紹介が原則で、遠隔転移がないことが条件。進行が緩やかな前立腺がんでは約30人が順番待ちをしており、待機期間は半年近くに達する。
 IMRTを数多く手掛けているのはこのほか、北海道大、東北大、近畿大などで、導入準備をしている病院も多い。
 だが普及にはネックがある。医学と理工学が融合した治療法だけに、物理学を修めた医学物理士が不可欠。同センターでは2人いるが、そういう施設はまだ少ない。
 例えば照射計画は物理士が作るが、前立腺の場合で3つ、頭頸部がんなどでは10以上作成、その中から医師とともに最適なものを選ぶ。「複雑な症例では作成に2週間ということもある」と物理士の遠山尚紀(とおやま・なおき)さん。
 計画通りの照射ができるかの検証試験も必須。もう一人の物理士、小玉卓史(こだま・たかし)さんは「計画で一ミリの精度を追及しても、治療装置が狂っていたら意味がない」と話す。
 幡野部長は「十分なスタッフがいないと成り立たない治療。放射線腫瘍医も物理士も技師も足りない現状を改善する必要がある」と訴えている。



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