内視鏡で腰痛治療
組織の癒着はがす
体への負担小さく

 なかなか痛みが取れない腰痛などの治療に、細い内視鏡で診断しながら、痛みのもととなっている組織の癒着をはがす新たな治療法が始まった。患者の肉体的な負担は小さく、従来の治療法とは違った方面から痛みを除去する方法で、専門医は「治療法としての確立はまだだが、痛みがなくなる患者もおり、今後有望な方法」としている。
 
 ▽エピドラスコピー
 この治療は、使う硬膜外腔(くう)内視鏡の名前から「エピドラスコピー」と呼ばれ、米国で1995年に始まった。  椎間板ヘルニアや脊柱(せきちゅう)管狭窄(きょうさく)症などが対象。
 これまでの治療は、炎症を抑制する薬などの投与に続き、痛みを伝達する神経回路を遮断するため、麻酔薬を注射する神経ブロック療法が行われている。それでも治らない場合は、神経を圧迫している骨や椎間板(ついかんばん)などを除去する外科手術となる。
 新治療法は「内視鏡により①見ながら癒着をはがす②生理食塩水で痛みのもとになっている物質を洗い流す③痛みの原因部分に薬剤を直接注入する-3つのことができるのが特徴」と自治医大麻酔科の五十嵐孝講師。
 背骨にある脊髄(せきずい)という神経は硬膜に覆われ、周りを取り巻く脊柱管との間に2-5mmのすき間(硬膜外腔)がある。例えば椎間板ヘルニアの場合、背骨の間の椎間板が飛び出して脊髄などを圧迫して炎症を起こし、その結果、硬膜外腔が繊維状に癒着し、これが痛みの原因となっているとみられる。

 ▽直径0・8mm
 これを除去するのが新治療法の狙いで、外科手術の前に考慮する方法と位置付けられる。
 五十嵐講師らが使っているエピドラスコピーは直径0・8mm。患者はうつぶせになり、尻付近の骨の部分から内視鏡を入れ、エックス線も併用して位置を見ながら、内視鏡を約50cm挿入する。「内視鏡では、硬膜外腔が癒着していると真っ白で先が見えないくらいで、炎症があると真っ赤になっている。そうした細かい情報が得られるのが利点だ」と五十嵐講師。
 診断するとともに、内視鏡の先端を動かして、癒着をはがす治療を同時に進める。手術後に痛みが残るFBSSという疾患では、この部分の癒着がひどい人が多い。
 1回の治療は約50分。状態をみるため一晩入院するが、翌日には退院できる。
 この治療法では、痛みがなくなる患者もいる一方、数カ月後に再発したり、ほとんど効かない患者もいるのが現状。

 ▽治療効果に差
 自治医大で治療を受けたある女性は、10年前から腰や右足の痛みがひどかったが、エピドラスコピーで、翌日には痛みが改善、1年後も良好な結果だった。一方、別の女性は2カ月後、治療前と同じ状態に戻ってしまった。
 この治療法を行っている全国の病院にアンケートした札幌医大の表圭一助教授(麻酔科)によると、一昨年5月までに10例以上の経験があるのは13病院で、治療効果については各病院の意見はかなり分かれていた。表助教授は「細かい手技などが施設によって違うようだ。効果があるという施設の方法を共有していく必要がある」と話す。
 約400の治療例の中で神経を損傷する合併症は0・5%、硬膜を破り頭痛などにつながる合併症は5・4%あった。
 まだ保険適用はされていない。この治療法に取り組むエピドラスコピー研究会で、五十嵐講師らが全国の治療結果を分析中で「全体を平均すると、半年くらいは効果がある。椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の一部が特に効くようだ」と話している。

 

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