| 自分の診療記録を自宅のパソコンで見たり、転院先の病院で利用したりできる共通電子カルテシステムを静岡県が開発、運用が始まった。メーカーごとに異なる
データの形式を標準化したのが特徴で、普及すればどの病院でもデータを利用できるようになる。厚生労働省も高く評価しており、全国の病院でも使えるシステムに発展させる方針だ。
▽サービス向上
「病名 胃かいよう」「主要薬剤 ガスター散2%10ミリグラム力価 1日2回朝、夕食後7日分…」 静岡県版の電子カルテシステムを導入した病院では、患者はこのような自分の診療記録が入ったCD―ROMを受け取ることができる。落とした場合に備え、パスワードも設定されている。 収められているのは、どのような薬を出したかを示す処方履歴に加え、血液検査の数値やCTなどによる画像診断の結果など。専用の閲覧ソフトが入っており、血液データをグラフ化したり、CT画像を拡大して見たりすることも簡単だ。 静岡県医療室は「患者が自宅のパソコンで内容を確認でき、他の病院でセカンドオピニオンを受ける際にも利用できる。患者サービスが向上し、医療の透明性が高まる」と県版電子カルテシステムの利点を強調する。
▽遅れた標準化
患者の診療情報はこれまで、医師が紙のカルテに手書きで記入したり、エックス線撮影のフィルムなどの形で保管したりすることが多かった。 だが手書きの記録は扱いにくく、セカンドオピニオンや転院でほかの病院で利用することは困難。電子カルテを導入している病院もあるが、データ形式が違うと転院先で使えず、同じ検査を再び受けなければならないなど不便な点が多かった。 実は国も既に「電子カルテ標準化の推進」を打ち出している。計画では「2006年度までに400床以上の病院および全診療所のうち6割以上に普及」としているが、システムの開発、導入に多額の経費が必要で、なかなか進んでいない。 そこで静岡県は自らソフトを開発し、無償で病院に提供。病院側は既存のシステムに手を加えるだけで、データ形式が標準化された電子カルテシステムを導入できるようにした。
▽チーム医療にも
静岡県版電子カルテの運用は沼津市立病院と市立袋井市民病院で一月からスタート。県内では本年度、11病院が導入を予定しており、09年度までに400床以上の病院で100パーセントの導入率を目指している。 厚労省研究開発振興課は「静岡県版電子カルテはデータの規格を標準化している上、小規模な診療所でも導入しやすいシステムになっている」と評価。ほかの都道府県でも使えるシステムに手直しして、希望する病院はソフトを無償で導入できる仕組みを作る予定だ。
沼津市立病院の秋山暢夫(あきやま・のぶお)名誉院長は「以前の手書きのカルテや紹介状は、悪筆のため内容把握が難しいこともあった」とした上で「現在はチーム医療が主流となっており、カルテは医師個人の記録から脱皮することが必要だ」と指摘。「電子カルテは患者への情報開示にも適しており、規格が標準化
されていればどの病院に転院しても利用できる。時間はかかるかもしれないが、必ず普及するだろう」とみている。 |