| がんの痛みを和らげる緩和医療は末期患者が対象と考えられがちだが、治療の初期から積極的に痛みを取り除くべきだ、との考えが広がってきた。痛みを抑える
ことで日常生活を取り戻せ、より効果的な治療を受けることも可能になる。「日本人は痛みを我慢する傾向があるが、我慢は〝百害あって一利なし〟だ」と専門 家は指摘している。
緩和医療を受けるとなると、『見放された』というイメージが付きまとうが、「実際にはそのようなことは決してない。最近では治療の途中でも緩和ケア科を紹介してくれる先生が少しずつ増えてきた」と話すのは聖路加国際病院緩和ケア科の林章敏(はやし・あきとし)医長。
▽ 治療加わる患者増加
林医長によると、従来のがん医療では治癒を目的とした治療と緩和医療の間にはっきり境界があった。「患者はそれまでの積極治療をあきらめ、ある意味では死
を待つだけ。医師の側も『ここまで頑張ったけれども、もう駄目です』と患者にどう伝えればいいか悩む。双方にとって非常につらい状態だった」という。 これに対し、治療の初期から緩和ケアが加わることで「治癒を目的とする治療から緩和医療への切り替えがスムーズにできるようになった」と林医長。治療でつらい思いをすると患者はなかなか治療に協力してくれないが、痛みを取ることで積極的に治療に加わる患者も増えたという。 痛みを取るには放射線治療やマッサージ、音楽療法、カウンセリングなどさまざまな方法があるが、最も重要なのがモルヒネなどのオピオイド鎮痛薬の投与。
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あきらめた治療も再開
環境保護活動をしていた50代の男性は肺がんが骨に転移し、強い痛みで歩くこともできなかった。だがオピオイドで痛みが取れて仕事に復帰。最終的には亡くなったが「車いすから解放され、自分の仕事をまとめられたことに誇りを持っていた」(同医長)という。 「ホスピスや緩和ケア病棟に入院したら、生きて退院できないと思っている人も多いが、それも違う」と林医長。痛みが楽になり、あきらめていた化学療法を再開した患者もいるという。 林医長は「痛みは決して末期になってから出るのではない。早期から緩和医療がかかわることの重要性を医師だけでなく一般の人にも知ってもらいたい」と話している。
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