卵管障害を内視鏡で治療
負担軽く、自然妊娠可能に
不妊治療に新たな選択肢

  卵管が詰まったり癒着したりして、卵子や精子が通りにくくなる卵管障害は不妊原因の約三割を占めている。不妊治療では体外受精を試みるケースが多いが、内視鏡(卵管鏡)を使って卵管の通りを良くする「卵管鏡下卵管形成術(FT)」も、自然妊娠が可能で患者の負担が軽い治療法として注目されている。
 
 ▽増加する不妊症
   帝京大の綾部琢哉教授(産婦人科)によると、不妊に悩む夫婦は現在、10組に1組とされ、女性の晩婚化や高齢出産の増加に伴い、年々増加しているという。  不妊の原因は男性側の場合が約3割、女性の卵管障害が約3割、排卵障害が約3割など。  卵管は子宮から伸びる長さ約10センチ、直径約1ミリの細い管。卵巣から排卵された卵子は、卵管を子宮の方向へ移動する途中で受精し、子宮内膜に着床する。  ところが卵管の内側が炎症などのため癒着して詰まると、卵子と精子が出会えず、妊娠できなくなる。卵管の外側が周囲の腸などの臓器と癒着しても、卵子が正常に運ばれなくなり、不妊の原因となる。
 
 ▽まずはFTを
 治療は、開腹手術や腹腔(ふくくう)鏡手術で卵管の詰まった部分を切り取ってつなぎ直す方法が行われていたが、妊娠率の向上とともに体外受精の割合が増え、卵管の手術は一時減少した。  だが患者の負担が軽いFTが登場すると「まずFTを試す。うまくいけば妊娠できるし、駄目でも体外受精がある」と考える患者が増えてきたという。  FTはカテーテルを子宮に挿入し、内視鏡で卵管内を観察しながら風船(バルーン)を膨らませて、卵管が狭くなったり詰まったりしている部分を押し広げる。FTだけを受ける場合は外来で可能で、軽い麻酔をかけて15分-30分で終わる。  ただ、全身麻酔で腹部に穴を開けて腹腔鏡を併用する施設もある。卵管鏡だけでは卵管の内側の癒着しか治療できないが、腹腔鏡を併用すれば卵管の外側に癒着があっても同時に治療できるからだ。  この場合の入院日数は4、5日程度。腹腔鏡をへそから、癒着をはがすための鉗子(かんし)を腹部に開けた小さな穴から挿入するが、傷跡はほとんど目立たないという。

 ▽妊娠率は約3割
 「卵管障害といっても、程度が軽く簡単に開通して妊娠する人もいれば、広い範囲が癒着してどうしても開通できない人もいる」と綾部教授。FTによる卵管開通率は、患者の症状や施設によってかなり異なるが、高いところでは90%以上。卵管以外の原因も関係するため妊娠率は30―35%程度だが、早い人は6カ月以内に妊娠できる。  最大のメリットは「うまくいけば自然妊娠が可能になること」(綾部教授)。体外受精は不妊原因は治療しないため、妊娠するには毎回、体外受精をしなければならない。これに対しFTでは、いったん卵管が開通し、卵管の炎症などが治っていれば再び詰まることは少なく、二人目以降も自然妊娠が可能となる。  「若い人は体外受精への心理的敷居が低いが、三十代後半ぐらいでは自然妊娠にこだわる人が多い」と綾部教授。「不妊治療に対する考え方は人によって大きく異なり、FTも万能ではないが、自然妊娠を望む人には有力な選択肢となる」と話している。

★卵管鏡下卵管形成術を行っている主な施設


ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2005 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved