見過ごされてきたピック病 若年認知症への対応を  

 認知症(痴呆症)は64歳以下でも約四万人の患者がいるなど、決して高齢者だけの病気ではない。性格の変化や理解不能な行動を特徴とする「ピック病」もこうした若年認知症の一つ。国内には1万人以上の患者がいると推定されるが、診断できる医師は少なく、正しい治療やケアが行われていないのが実情だ。専門家らは今年、研究会を結成、患者の実態把握や診断基準作成を始めた。

▽記憶力の低下や行動異常

 ピック病は、働き盛りの50―60歳に多く、脳の前頭葉から側頭葉にかけての部位が委縮する。記憶力の低下を主症状とするアルツハイマー病に対し、怒りっぽくなるなどの性格変化や、同じことを繰り返すなどの日常生活での行動異常が特徴。次第に記憶障害や言葉が出ないなどの神経症状が現れ、最終的には重度の痴呆に陥る。 原因や治療法はまだ十分に分かっていないが「脳血流を活発にする栄養補給や適切なケアで、悪化を遅らせることは可能と考えられる」と、群馬県こころの健康センターの宮永和夫所長。

▽病名を広める必要性

 国内では、64歳以下の若年認知症患者のうち、三分の一がピック病と推定される。しかし、病名が知られていないため、アルツハイマー病と誤診されたり、うつ病や統合失調症と間違えられ、不適切な治療を受けることもある。
 万引で捕まったことをきっかけにピック病が見つかったケースも珍しくはないという。「万引で会社を辞めさせられるか、ピック病と診断されて休職扱いになるかで、患者や家族の生活も変わる」と、宮永所長は早く診断基準を確立し、病名を広める必要性を訴える。
 患者は介護保険サービスが受けられるが、老人に比べ力が強く、はいかいなどを理由に受け入れてくれる施設が少ないのが実情。夫(67)が七年前に発症した女性(62)は「他のお年寄りに暴力をふるう可能性があるから、鎮静効果の高い薬をのませたい」と入所条件を切り出され、「自分たちに楽な患者を受け入れようとしている」と憤りを感じたと語る。
 宮永所長は「比較的若い人はエネルギーを使わせて落ち着かせることが、悪化を防ぐためにも重要」と指摘。「国や自治体は高齢者だけではなく、若年認知症も視野に入れた支援やケアの在り方を考えていくべきではないか」と話している。


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