| 放射線被ばくや造影剤使用などの体への負担を伴わずに、体内の血管を、しかも動脈と静脈とを分けてきれいに描き出す。磁気共鳴画像装置(MRI)を使った「FBI」と呼ばれる検査法が日本で開発され、臨床現場で使われ始めた。
▽増える血管疾患
高齢化や食生活の欧米化による糖尿病や高血圧、高脂血症などの増加で、それに伴って起きる心臓や脳の血管障害や下肢の動脈が詰まる閉塞(へいそく)性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患も増加の一途をたどっている。 静脈でも静脈瘤(りゅう)や、俗にエコノミークラス症候群と呼ばれる肺血栓塞栓(そくせん)症を引き起こす深部静脈血栓症などがある。これらの病変の位置や程度をいち早く突き止めることは治療に重要になる。 従来は血管を描き出すための造影剤を注入し、エックス線で撮影する血管造影が主に用いられてきた。しかし造影剤は腎障害がある人には使えないなどの問題があった。 超音波検査も使われるが、特に静脈の評価が難しく、熟練が必要。 さらに血管造影には被ばくと造影剤による副作用もある。「造影剤の副作用は数%だが起きる。多くは軽いが、ごくまれにショックなど重い副作用を引き起こすこともある」。北九州市の戸畑共立病院放射線科の中村克己(なかむら・かつみ)部長はこう説明する。
▽血流の速度差利用
「患者の負担が少ない、より効率の良い検査法を」との医師の要望に、東芝メディカルシステムズがいくつかの病院と共同で1997年から開発を始めたのがFBI。 動脈の血流は心臓が血液を送り出す収縮期には速く、心臓が肺から血液を取り込む拡張期には遅くなる。MRIが検知する血液から出る微弱電波の強さも、この流速の違いに伴い変化する。 一方、下流に位置する静脈では流速はほぼ一定。この違いを利用し、造影剤を使わずに動脈と静脈を分離して画像化することに成功した。 この機能を備えたMRIは2000年に商品化。当初は流速が早い太い血管しか検出できなかったが、今では末梢(まっしょう)血管も十分に検出可能になった。また血管がさまざまな方向に走っている部位にも対応可能だという。
▽CTと同等の成績
中村部長は閉塞性動脈硬化症の患者13人に、16列マルチスライスCTによる血管造影とFBIを行い、その検査結果を比べたが、検出感度や正診率などの検査能力に差はなかったという。 さらに血管造影では、血流の多少にかかわらず一様に写るが、FBIでは十分な血流があるかどうかも判読可能。「いわば狭窄(きょうさく)という形状だけでなく、血管の機能も評価できる」と中村部長。 血流が遅いため造影剤がうまく流れないなどで、従来は難しかった静脈瘤など、脚の静脈の検査も、この方法なら簡単になるという。 下肢全体の撮影で20―30分程度かかり、CTに比べ検査時間が長いのが欠点だが、被ばくがなく造影剤も不要と、安全なことが大きな利点になる。 「血管造影などの体に負担のある検査も必要ならためらわないが、使わずにすむならそれに越したことはない」と中村部長。戸畑共立病院では、特に下肢の血管疾患の検査は既にFBIを第一選択にしているという。 中村部長は「治療効果を判定するための検査もためらわずに何度でも実施できるし、特に検診には威力を発揮すると思う。なるべく早く普及してほしい」と話している。
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