| 日本臨床腫瘍(しゅよう)学会が認定する「がん薬物療法専門医」の一期生47人が4月に誕生した。日本癌(がん)治療学会も専門医制度を計画しているが、認定にこぎ着けたのは初めて。米国では40年前に登場、今では治療の中核を担う腫瘍内科医が日本にもようやく登場した。
▽薬で治る時代に
がんは手術と抗がん剤、放射線が治療の柱だが、これまでは手術が中心で、薬による化学療法も外科医が行うことが多く、内科医の影は薄かった。その理由について今回、専門医に認定された東北大病院腫瘍内科の石岡千加史(いしおか・ちかし)教授は「昔の抗がん剤は効かなかったから」と話す。 しかし今では白血病や乳がんなど、薬で治癒が期待できるがんも増えた。薬の種類も増え、投与法も経口薬や長時間の持続点滴など多様化。それらを組み合わせた、科学的根拠に基づく標準治療も次々と登場している。 「化学療法は専門化が進み、不断の勉強が必要。外科医は外科の勉強も必要で、とても片手間でできない時代になった」と石岡教授は説明する。 さらに治癒が望めなくても、薬で生活の質(QOL)を保ちつつ延命を図ることも可能になった。その治療の主役が腫瘍内科医。活躍の場の一つが外来がん化学療法だ。
▽通院治療が原則
患者が定期的に通院し、抗がん剤の点滴を受ける外来治療はここ数年、急速に広がっている。 「『少しでも子供と過ごしたい』『仕事を続けたい』という患者さんの願いに答えるのも医療の務め」。癌研有明病院の畠清彦(はたけ・きよひこ)外来治療センター長はこう話す。 同センターは国内最大規模で、2月は延べ1610人を治療した。広々として、静かな音楽が流れる落ち着いた室内には、カーテンで仕切られたリクライニングシートが34席並ぶ。 ゆったり座って点滴を受けながら、テレビを見たり雑誌を読んだり。そしてソファで点滴の順番を待つ人。いずれも、副作用の激しい抗がん剤治療を受けている患者との印象は全くない。 外来治療が普及したのは、制吐剤や白血球減少を抑えるG―CSFなどで副作用の予防と軽減が可能になったことが大きい。同病院では高齢者や合併症がある人などを除き、化学療法は全員外来だ。痛みについても「あまりに強い場合は一時入院するが、基本的には外来で可能」と畠医師。
▽さらなる拡充を
ただ外来治療の実態について、畠医師は「まだまだ足りない」と話す。 現在、30床以上の規模の外来センターを持つのは同病院のほか、国立がんセンターの中央病院、東病院と静岡県立がんセンターだけ。 一方、米国のがん治療のメッカ、MDアンダーソンがんセンターは外来部門だけで72床あり、さらに150床の専用病棟を建設中。 日本でも癌研有明病院が60床に、東北大の化学療法センターも12床から30床にそれぞれ年内に拡充するなど、体制強化は進んでいるが、専任スタッフがいない小規模施設も多い。 さらに一歩進め、各診療科の医師が集まり、最善の治療を行うチーム医療の実現には、腫瘍内科医が圧倒的に足りない。米国の9700人に対し、日本はまだ47人。日本臨床腫瘍学会は今後、4000人程度を目指し、毎年の認定を行う。 石岡教授は「腫瘍内科医はチーム医療のまとめ役になる。ただ放射線治療や緩和医療の専門家も育成しないと、これからの治療はできなくなる」と話している。
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