|
振動波で肝臓の硬さ計測 負担なく繰り返し可能 |
|
C型肝炎などで慢性肝障害が進むと肝臓の組織が変質する線維化が起こり硬くなる。この硬さを測ることで、肝硬変の進行度を簡単に調べる装置がフランスで開発された。国内でも医療機器としての認可申請に向けた臨床試験が進んでいる。現在、標準的な検査法となっている肝生検が肝臓に針を刺すのに対し、患者の体を全く傷つけない。繰り返し検査することも可能で、健康診断にも使えそうだ。 ▽振動波で測定 ![]() この装置はエコセンス社が開発した「フィブロスキャン」。原理は簡単で、物質を伝わる振動波が、硬い物質の中では速く、軟らかい物質の中では遅く伝わることを利用している。 検査を受ける人は、超音波検査のように服をめくって横になる。脇腹に当てたプローブ内の装置から発生した弱い振動が、肋骨(ろっこつ)の間を通って肝臓に伝わり、超音波を使って振動が肝臓を伝わる速度を測る。 指先で脇腹をトンと軽くたたかれるような振動を感じたと思う間もなく測定は終了。位置を変えながら十回測っても数分しかかからず、中央値が肝臓の弾性度として表示される。高度肥満で皮下脂肪が厚すぎる場合などを除き、ほとんどの人で測定可能だという ▽重要な病期診断 肝臓は栄養の代謝、貯蔵や毒物の分解などさまざまな機能を持つ人体の化学工場で、肝硬変が進み肝不全になると命にかかわる。このためフィブロスキャン検査を実施している順天堂大消化器内科の榎本信行(えのもと・のぶゆき)医師は「肝線維化がどの段階にあるかを調べることは非常に重要だ」と話す。 線維化を調べるには血液検査や超音波エコーなどの方法もあるが、肝臓に針を刺して採取した組織を評価する肝生検が最も正確とされる。だが患者の負担が大きく、出血の恐れなどから通常一泊の入院が必要。採取できる組織も肝臓全体のごく一部のため、たまたま線維化の進んでいない部分を採ってしまうエラーが1、2割程度起きる。 これに対し、フィブロスキャンは外来で検査できるほど簡単。体表から深さ二・五―六・五㌢の範囲を測ることができ、エラーも起きにくい。 ▽健診への導入期待 ![]() 国内での肝炎患者はウイルス性やアルコール性の肝炎が多いが、最近注目されている肝炎に「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH)がある。 「ただの脂肪肝なら減量すれば元に戻る。だが脂肪肝の人の中に、肝線維化が進み肝硬変になって亡くなる人がいる」(榎本医師)。原因不明の肝硬変には相当数のNASHが含まれているとみられ、高血圧や高脂血症、耐糖能異常などが複合した生活習慣病のメタボリックシンドロームが背景にあるとされる。 NASHは通常の健康診断では分からず、診断には肝生検による組織検査が必要だ。脂肪肝が見つかっても「アルコールを大して飲んでいないから大丈夫だろう」と油断していると、気付いたときには肝硬変になっていることもある。 榎本医師は「今、全世界ではアルコール性肝障害もNASHも、それぞれ約六億人いるとされる。C型肝炎は今後減るだろうが、生活習慣病はなくならない。健康診断にフィブロスキャンが導入されればNASHの人も発見できるようになるだろう」と話している。 フィブロスキャンは現在、10数台が大学病院などに導入され、臨床研究などが行われている。順天堂大病院では榎本医師の外来日(月、火の午前中)に受診すれば検査を受けられる。 |