| 血液を濃縮してつくる多血小板血漿(けっしょう)(PRP)に、骨の再生や傷の治りを早くする作用があることが分かり、あごや歯ぐきの骨の再生など、歯科
を中心に利用が広がっている。患者自身の血液を原料とするためウイルス感染などの危険は低く、術後の腫れや痛みを減らす効果もあるという。今後、さまざま な分野に応用が広がりそうだ。
▽移植骨が早く硬化
明海大病院(埼玉県坂戸市)の嶋田淳(しまだ・じゅん)教授(口腔(こうくう)外科)によると、同病院でPRPを使うのは、あごの骨の量が少ない人にインプラント(人工歯根)を入れるための骨移植や、がんのため切除したあごの骨の再建など。
インプラント治療では、歯周病などで歯が無くなったあごの骨にチタン製の土台を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける。しかし歯が抜けると、かむ力が歯 ぐきに伝わらないため「廃用性委縮」という現象が起き、あごの骨がだんだんやせてしまう。特に上あごは上顎(じょうがく)洞という空洞がすぐ裏にあり、骨
の厚さが足りずインプラントを入れられないことがある。 この場合、腰やひざ頭などから採取した骨を細かく砕き、上顎洞に移植して骨を厚くする。しかし移植した骨が安定するまで約10カ月も待つ必要があった。
▽血小板の増殖因子
このような治療に効果を発揮するのがPRP。移植する骨に混ぜると早く硬くなり「四カ月程度でインプラントを打てるようになる。骨の厚さにもよるが骨移植と同時に打てることすらある」(嶋田教授)という。 さらにPRPを使うと人工骨を半分ぐらい混ぜることができるため、自己骨の採取量を少なくでき、神経損傷などの採取に伴う合併症も起きにくくなる。
PRPが口腔外科で使われ始めたのは1990年代後半。腫瘍(しゅよう)で切除したあごの骨を再建する際、患者の血液からつくったのり状の成分を使うと早く硬い骨ができることを米マイアミ大の研究者らが発見。組織の成長や細胞分裂を促すさまざまな細胞増殖因子が血小板に多く含まれていることが分かってき
た。 今では日本でも「インプラント治療を行っている大学病院の口腔外科では、ほとんどがこの治療を手掛けている」(嶋田教授)という。
▽歯科以外でも期待
PRPは、使う直前に患者から採取した血液を遠心分離機にかけてつくる。移植用の骨片に混ぜると、PRP中の血小板が集まってかたまり始める。この後移植するが、体内で血小板から増殖因子が放出され、さまざまな骨になる幹細胞の成長を促すのだという。 PRPには血小板が多く含まれるため止血効果も高い。このため「術後の腫れや痛みが少ない患者が多い」と嶋田教授。傷が早く治るので感染の危険が減り、傷跡も目立たなくなるという。 現状では利用は歯科が中心だが、皮膚などの軟組織に使った方が効果が出やすいとされ、今後は皮膚科や形成外科などでの応用が期待される。 糖尿病による皮膚の難治性かいようへの応用に取り組んでいるのは埼玉医大の市岡滋(いちおか・しげる)・助教授(形成外科)。壊死(えし)した皮膚組織を切除しても、血流が足りないと皮膚が再生しない。そこで切除個所にPRPを塗って血管の新生を促進する。 人には使い始めたばかりで治療成績はまだ出ていないが、マウスの実験ではPRPを使うと皮膚の再生が進むことを確認。オーストラリアでは既に人に使って効果を挙げているという。
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