シャント術などが一般化
胎児治療で検証
 「胎児治療」は難しい先端医療というイメージだが、実際にはさまざまなレベルがある。特に超音波診断技術の発達とともに、日本でも1980年代から胎児治療が徐々に行われるようになった。
 国立循環器病センター(大阪府吹田市)周産期科の千葉喜英部長は「既に胎児治療の一部は先端医療としての過程を終え、一般的治療に移行してよい部分がある」と話す。
▽腹腔内輸血が最初
 胎児治療は、60年代に初めて鎌状赤血球症の胎児の腹腔(ふっくう)内へ輸血が試みられたことが最初と考えられている。
 現在は胎児からの採血、胎児への輸血は直接、臍帯(さいたい)の血管から可能だ。
 本格的な胎児治療としては、86年に米カリフォルニア大で、尿路閉鎖症の胎児のぼうこうに極めて細い管(シャント)を入れ、尿を体外(羊水内)に出させる治療をしたケースが知られる。
 「当時は開腹して胎児の体を子宮から半分出して手術」(同部長)するという大掛かりなものだった。
 現在、尿路閉鎖症の治療で開腹はしない。超音波で見ながら、母体の外から細い中空の針を胎児のぼうこうまで刺し、中を通してプラスチック製のシャントを送り込む。針を抜くと、シャントの両端に近い部分が胎児のぼうこうの内側と体の外で膨らみ、抜けないように固定される仕組みだ。
▽86施設で
 日本の胎児治療については、日本産科婦人科学会の周産期委員会が、その実態と効果を調べるために登録制度を作っている。
 その結果、全国157施設から報告があり、96~99年の4年間で86施設で584例の胎児治療が実施されたことが分かった。
 「検証の結果、“効果あり”と一般的な治療法として認められたのは①尿路閉鎖症に対するシャント手術②胎児輸血③頻拍型不整脈の薬剤治療④胸水症に対するシャント手術の4つだった」と千葉部長。
 胎児輸血はRhマイナスが多い欧州で、母児間血液型不適合による胎児貧血への治療として行われるが、日本では少なく、パルボウイルスに感染した胎児貧血への治療として行われている。
 頻拍型不整脈の薬剤治療は、薬が胎盤を通るので母体に注射すればよい。胎児のほとんどのケースで治療されているという。

 胸水症は胸に水がたまる病気。原因はさまざまで、治療は尿路閉鎖症と同じように胸腔(きょうくう)にシャントを入れ、中の水を出す。良性腫瘍(しゅよう)のリンパ管腫が原因とみられる場合、名古屋市大病院などで抗がん剤を注入して治療に成功した例もある。


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