恵まれない子供に医療を
特注バスで初期診療
米の健康基金が創設20年

 貧困などで十分な医療を受けられない子供の診療に当たる米国の非営利団体「子供の健康基金」(CHF、本部ニューヨーク)が、設立二十年を迎えた。特注の大型診療バスで各地に出向き無料で診療、ハリケーンの被害者支援にも取り組んでいる。

 

▽21拠点
 基金は1987年に、人気デュエット、サイモン&ガーファンクルのポール・サイモンさんと、小児科医のアーウィン・レドレナーさんがつくった。
 設立の経緯について基金のデニス・ジョンソン副会長(公共政策担当)は「80年代に米国の都市圏でホームレスの問題が非常に深刻化し、ニューヨークでは特にひどかった。行政当局に聞いたら、十分な健康管理体制が不足していると分かり、トラックに医師を乗せて子供たちのところに行き始めたのが出発点です」と解説する。
 大規模コンサートでの募金などで、活動は大きく広がった。民間企業などからの寄付も受け、現在は米北西部のアイダホ州、太平洋岸のカリフォルニア州、南西部のテキサス州など21の拠点がある。

▽車内で診療

 本部には約50人のスタッフ、各拠点には契約した医療チームが詰め、新生児から20歳すぎまでを対象に診療に取り組んでいる。
 活動の舞台は、基金が設計した専用の大型バス。車内には2つの診療室と、看護師の作業スペースが設けられ、医療品や電子カルテを保管。酸素ボンベや、目や聴覚、血圧の測定機器など「走る診療所」とも呼べる設備という。全米で25台が稼働している。
 診療バスは恵まれない子たちがいる都市部や地方の現場に出向き、初期の手当てや診療を無料で行う。子供に多いぜんそくや風邪、中耳炎などを処置し、歯科治療にも当たる。ワクチン接種などの病気予防や、肥満対策、衛生面の指導も実施。ビデオデッキを備え、子供や家族向けの健康教育ビデオで啓発もできる。
 医療チームは、さまざまな状況に対処できるよう、小児科医、看護師、栄養士らに加え心理学者も参加している。「心の健康も体のケアと同じぐらい対応が必要」(同基金)との考えからだ。専門的な診療が必要と判断した場合は、連携する大学病院へ橋渡しする。

▽130万人
 

 診療バスは、92年に米フロリダ州を直撃した超大型ハリケーン「アンドリュー」や、2001年の米中枢同時テロでも緊急出動し、被害者や、家を失った多数の子供を支援した。05年のハリケーン「カトリーナ」では、基金はミシシッピ州、ルイジアナ州などに新たに3つの拠点を設置した。
 この20年で診療を受けた子供らは約130万人に上る。「貧困に関係した病気が多い」とジョンソン副会長。このため基金は、政策の改善や活動の普及を目指し

、地域の児童関係のグループや消費者団体と協力し、政府や報道機関への働き掛けも進めている。
 ジョンソン副会長は「中流階級の親が自分の子供に受けさせられると思うような医療を、米国では何百万人という子供が受けられないでいるのが現状。すべての子供が、質の高い医療を受けられるようにしたい」と話している。


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