可能性広がるCT肺検診
診断能力が大幅アップ
被ばく量も低下へ


 がんのうち死者が最も多い肺がん。エックス線単純撮影による集団検診が普及しているが、それでも進行して見つかることが多いためだ。このため10年ほど前から、早期発見が可能なCTによる検診が普及し始めた。被ばくの問題も技術の進歩で解消されつつある。

わずか3秒

 
「はい、息を止めて」。寝ていたベッドが動いたかと思うと、次の瞬間には「終わりです」。その間わずかに3秒弱。隣室に移ると、既にコンピューター画面に肺の画像が写っていた。
 長崎県の健康保険諫早総合病院で、最新鋭CTによる検査を体験した。ここでは昨年五月から、エックス線照射装置が一回転する間に64枚も撮影するマルチスライスCTを肺がん検診にも使っている。
 以前は一回転で4枚の4列CTを使っていたが「20―25秒の息止めが必要でした」と放射線科の一番ケ瀬敬(いちばかせ・たかし)技師。
 集団検診で一般的な間接撮影の10倍とされた被ばく量も、今回は0.35ミリシーベルトとほぼ同程度。同技師によると、体の部位ごとに照射量を自動調節する機能を使い、さらに独自の工夫を加えてこの値を実現した。
 今回の撮影では0.625ミリ隔で513枚もの断面画像が得られた。これを基に、さまざまな方向から見た断面を鮮明に表示できる。診断に当たる同科の林秀行(はやし・ひでゆき)部長は「疑わしい部位の立体像が分かることで、がんかどうかの判断がつきやすい」と話す。

数ミリでも発見

 ここまで高性能でなくてもCTの能力は高い。「単純撮影では手前から奥までの肺全域が一枚のフィルムに重なるため、早期がんの淡い画像は写らないことが多い。さらに肺の30%は臓器などに隠れてしまう」と林部長。断面を描き出すCTにはこういう弱点はない。
 同病院は2001年8月以降、延べ1300人のCT検診で早期がん1例を見つけた。大きさは15㍉だったが、濃度が淡く、心臓に近いため単純撮影では写らなかった。
 1993年に日本で最初にCT検診を導入した、東京都予防医学協会が運営する「東京から肺がんをなくす会」では、10万人当たりの肺がん発見数がCT導入前の163人から、導入後は433人(昨年8月現在)と急増。発見者の5年生存率も78%に達した。
 国立がんセンターがん予防・検診研究センターの柿沼龍太郎(かきぬま・りゅうたろう)画像診断開発室長は「数㍉程度の影でも発見できる。CT検診の能力は格段に高い」と強調する。

受診者4万人

  被ばくのリスクについても、50歳以上ならCT検診による利益が上回り、低線量化が進めば40歳から利益が見込める、との試算結果が出ているという。CT検診で肺がん死が減るかどうかの科学的な結論はまだ出ていないが、現在、米国で大規模な臨床試験が進行中で、2009年以降には結論が出る見込み。
 ただCTにも弱点はある。気管の表面にできる扁平(へんぺい)上皮がんの検出は苦手で、喀痰(かくたん)検査の併用が必要になる。少ないながら進行の早いがんもあり、この場合は年2回のCT検診でも万全ではない。単純撮影より費用が高い問題もある。
 とはいえ、希望者にCT検診を導入する自治体も増え、CT検診車も登場するなど着実に普及。昨年は6万人以上が受診した。しかし、肺検診の受診者約700万人に比べるとまだ一握り。
 柿沼室長は「特に喫煙経験がある50歳以上の男性で、家族にがん患者がいるハイリスクの人はCT検診を考えて」と訴えている。



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