『がんとこころのケア-3』

 患者の感情に配慮を 
内富庸介・国立がんセンター部長

 


 
 ―現状では残念ながら、がん患者の6割が再発、進行してしまいます。

 「少なからず、治療の目的がここで『治癒』から『生活の質を保った上の延命』に変わるのが現実です。最初の告知の時は患者さんの知識も限られますが、再発告知の際はもうかなり勉強しているので、事態の重みは十分分かり、落ち込みは何倍も深くなります」

 ―患者の反応は。

 「無意識に現実から逃げたいため、すぐに次の治療を始める人が多い。医師も希望の芽を摘みたくないため、はっきり情報提供できず、患者さんに全然理解されていないことが多い。こうなるとボタンの掛け違いをしたまま、体に負担が大きい、無意味なだけの抗がん剤治療を続けてしまうことも起きます」 

 ―告知の方法は。

 「これまでの経緯を一緒にじっくり振り返り、残念だったことやつらかったことなどに触れて患者さんの感情に気を配り、事実を受け入れるまでじっと待つ。普段の医師と患者の関係を少し踏み越えたものが求められます」

 ―さらに進むと、積極的な治療の断念を伝える場面が来ますが。

「死に直面した中で、患者さんは『自分の人生に意味があったか』との問い掛けが大きくなる。そして死ぬことの恐怖より、自分が無価値な存在として扱われるのではとの不安。それで尊厳死を望む人も出てきます」

―そうならないためにはどのように。

 「宗教など、超越した存在に頼る人もいますが、われわれは『ライフレビュー』という方法をよく使います。誰にも必ずある、これまでの人生で誇りを抱いている掛け替えのないエピソードを聞き出し、その思いを共有する。いわば過去と現在とを共有することで、残された短い時間での実現可能な希望について話し合えるようになります」




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