広がる床ずれ治療の幅
“再生”医薬や被覆材
使用には注意も必要
 寝たきりの人がかかりやすい床ずれ(褥瘡=じょくそう)の治療の幅が広がってきた。予防が第一で、治療は長期化しやすいが、細胞増殖因子を使って組織の再生を促す新薬や、傷を湿潤に保つ被覆材などが次々と登場している。ただ使用には注意も必要だ。


▽悪化まで気付かず
 褥瘡は、寝返りを打つのが難しい人の仙骨部(尾てい骨のところ)や肩、頭部など、骨が出っ張った部分によくできる傷の一種。「栄養不足で脂肪や筋肉の少ない人や、皮膚が老化で傷つきやすくなっている人などは要注意。2、3日でも簡単に発症する」と話すのは、坪井良治・東京医大皮膚科教授。
 昨年秋以降、対策を取らない医療機関の診療報酬が減点されるようになったこともあり、関心は高まっている。
 治療時に用いる重症度は4段階。傷が表皮のみの場合がⅠ度、その下の真皮に達した場合がⅡ度。さらに進むと、皮下組織(脂肪)に及ぶⅢ度、筋肉や骨まで侵されるⅣ度となるが「痛みがないため本人が自覚しないまま急速に進行し、数日でⅣ度になることもある」(坪井教授)という。


▽細胞の増殖促す
 重症化した褥瘡の急性期の治療は、壊死した組織を取り、傷を洗浄するのが中心。その後の慢性期には、傷を治すためにできてくる新しい組織「肉芽(にくげ)」の形成を促す薬剤を投与することが多い。
 2年前に発売された新薬「トラフェルミン」は、従来の薬剤に比べ肉芽の形成が早く、治療効果が高いとして、使用する医療機関が増えている。この薬は、傷の治りに関与する特定の細胞の増殖を促すタンパク質「bFGF」が主成分。同種の薬は世界初で、肉芽以外にも新生血管や表皮をつくる作用がある。
 坪井教授は「細胞を傷の部分に集める作用があるので効果が表れるのが早く、傷の回復が遅れる傾向の人に向いている」と話す。
 傷に噴霧して使うが、投与量が多すぎるとかえって効果が低下するため、適量を守ることが重要。患部にがんがあると、がん細胞まで増殖させる恐れがあるため、事前のチェックも欠かせないという。


▽感染の有無確認を
 傷を覆って治りを早くするのに使う、高分子やポリウレタンなどでできた被覆材も、さまざまなタイプの使い分けが可能になった。
 清潔な傷口からの浸出液中に含まれる化学物質には、表皮などの形成を促す作用がある。このため、被覆材で湿潤な状態を保つことは、ふつうの傷と同様、褥瘡でも効果的だ。だが、褥瘡の場合は細菌感染が起きていないことを厳密に確認することが大事だという。
  聖路加国際病院(東京)の柵瀬(さくらい)信太郎・外科医長は「外からは小さく軽い傷に見えても、中で何倍にも広がってうみがたまっていたり、感染が骨髄や脳に及ぶ場合もある。こうしたケースを見逃して安易に被覆材でふたをすれば、命取りにもなりかねない」と、慎重な使用を求める。
 「被覆材の効果を上げるためにも、こまめに傷の状態を評価し、患者の全身管理も適切に行わねばならない。看護者任せにせず、医療スタッフ全体で取り組む姿勢が大事だ」。柵瀬医長はこう話している。


 

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